第3に、トランプ氏が同盟国よりも米国の敵と親密になるとすれば、恐るべきことだ。トランプ氏がこれまで賞賛してきたプーチン大統領にすり寄る目的で、2014年のロシアによるクリミア併合を容認したりしたら、欧州連合(EU)はどうしようもない状況に置かれるだろう。
第4に、トランプ氏の行動は予測不可能だ。大統領選挙期間中の1年半の間、トランプ氏は発言の内容を、心変わりをしたとは認めないで簡単に翻すのが常だった。
欧州が講じるべき3つの策
トランプ氏の大統領就任までは、まだ2カ月ある。その間、欧州は何をすべきだろうか。
まず、米国に対する影響力の強化を図る必要がある。トランプ氏の著作や行動からすれば、彼は他の独裁者と同様、弱者は侵略されて然るべきと考えているふしがある。
欧州はプライバシー、競争政策、課税などの分野で互いに協力すれば、米国に対しても強く出ることができた。イラン核合意に向けた交渉でも、英仏独という欧州の3大国が米国の姿勢を転換させた。EUは安全保障、外交政策、移住、経済に関する共通の合意を探る必要がある。
第2に、リスク分散に向けて、両面作戦を取るべきだ。EUは、トランプ流の修正主義に対抗するため、他の勢力と組んで国際機関を強化するとともに、外交も多様化する必要がある。トランプ氏がロシアや中国と組んでEUを疎外するのを待つのではなく、何らかの方策を探るべきだ。
たとえば、EUの対中武器禁輸措置の今後を中国と協議したり、日本との間で従来とは違う関係を構築するなどの手があり得るのではないか。
第3に、欧州自身の安全保障への投資を始める必要がある。ウクライナからシリア、サイバー攻撃からテロ攻撃まで、欧州の安全保障は多様な観点から模索されてきた。
EUは、5億人の欧州人が3億人の米国人に安全保障を委ねるのは不可能だと理解しているはずなのに、この状況の打開策をほとんど講じていない。欧州防衛のため独仏協調を具体化し、英国もこの枠組みに加えるべきだ。
ただ、米国との協力関係はオープンにしておく必要がある。トランプ政権は永久に続くわけではないからだ。欧州と米国との同盟関係は、互いの利益を理解して守るという2つの柱の上に乗っている限り、存続する可能性が高い。
欧州にもポピュリストが存在することからすれば、前途は多難ではある。フランスの極右政党である国民戦線のルペン党首らは、トランプ氏の勝利を真っ先に祝福した。しかし、トランプ氏が牛耳る世界で生き残るために、欧州は再び偉大な存在になるための努力をすべきなのだ。
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