AI時代が到来!将棋も産業もこう激変する 羽生善治vs松尾豊「鍵はディープラーニング」

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AI時代はすぐそこまで来ているのか。PC端末を間にディープラーニングについて語り合う、羽生善治・将棋棋士(右)と松尾豊・東京大学准教授(左)
「AI」(人工知能)は今、第3次ブームに入っている。その立役者はディープラーニングだ。それは、人間の認知メカニズムをモデル化することによって、AIにデータを与えるだけで、何を特徴に認識すべきか、自分で判断できるようにした。
人間は子どもでも、猫を何回も見れば「ヒゲがある」など特徴を一般化して理解し、猫を認識できるようになる。この対象を認識して概念を形成するために必要な情報を、特徴量と呼ぶが、従来のAIでは人間が決める必要があった。が、ディープラーニングでは、AI自らが特徴量を取り出せるようになる。
こうした技術革新についてトップ研究者である松尾豊・東京大学准教授と、世界最先端の開発を進める米グーグル傘下の英ディープマインドを取材した経験を持ち、自身もコンピュータ将棋とのトーナメント戦へ参戦を決めた羽生善治・将棋棋士に、対談してもらった。

将棋の大局観のようなアプローチも

11月11日(金)に発売する「ビジネスパーソンのための決定版 人工知能超入門」(小社刊)では、2人にディープラーニングが産業や企業に与える影響などについても話していただいています。ぜひ知的興奮に満ちた対談をお楽しみください。(書影をクリックするとアマゾンの販売ページにジャンプします)

――英ディープマインドが開発した「アルファ碁」がイ・セドル九段を4勝1敗と圧倒しました。

羽生:読みに関しての無駄の省き方というか、引き算としての洗練のさせ方、将棋でいうと大局観のような人間的なアプローチが急速に進歩していますね。以前の計算量で、精度の低さをカバーするといった足し算の世界とは変わったと感じました。

ただ、人間でもAIでも、正しく一つの局面を評価することは最も難しいのです。人間のプロ同士でも見解は分かれ、お互いの正しさを競い合っているような面があります。AIのプログラムの間でも、同じ局面に対して、評価関数がプラス100になるものもあれば、マイナス100になるものもあるように、バラツキがあります。

松尾:イ・セドル戦当時のアルファ碁は、状態がよいか悪いか、今だったらどの手がよいかを、膨大なデータを元に計算できるようになっていました。

ですが、もう少し大ざっぱに、「この後、こう行って、こうなったら勝つんじゃないか」という思考は入っていなかったと思います。そのような、状態と行動の特徴認識をできるようになれば、羽生さんの言われる大局観につながっていくはずだと思います。ただし、その際は人間の大局観をどう定義するか、ということが問題になるでしょう。たとえば今、2勝しているから、ここはちょっとチャレンジしてよいだろうとか、もっと大きなフレームが必要になるかもしれません。

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