AI時代が到来!将棋も産業もこう激変する 羽生善治vs松尾豊「鍵はディープラーニング」

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羽生善治(はぶ よしはる)/将棋棋士。1970年生まれ。85年史上3人目の中学生プロ将棋棋士に。94年に九段、96年にはタイトル七冠独占。タイトル獲得数は歴代1位。2008年永世名人の資格を獲得

羽生:昔の人が今の将棋を見たら、怒り出すでしょう。かなり伝統的な世界ですから。たとえば昔は、穴熊で隅に囲むのは邪道というか、王道ではないからダメだというような縛りがあった。でも、その価値基準も、時代によって変化しています。

コンピュータ将棋のプログラムは、チェスのプログラムを多く取り入れています。チェスだと、ビショップとナイトがほぼイコールの価値ですが、将棋も、たとえば角と他の駒がほぼイコールで、角を捨てることを全然ためらわないんですね。そこは人間の目から見ると、ちょっと違うんじゃないかと思うことはあります。

でも、そうしたコンピュータ的な発想を取り入れて、実戦で指している棋士もけっこう増えているので、今ちょっと融合し始めているような状況です。

AIの学習はまるで伝言ゲーム

松尾 豊(まつお ゆたか)/東京大学准教授。1975年生まれ。97年東京大学工学部卒。2002年東京大学大学院博士課程修了。博士(工学)。産業技術総合研究所研究員、米スタンフォード大学客員研究員を経て、07年より現職

松尾:ディープラーニングは人間をモデルだけ真似しているのですが、人間の脳は相当よくできていて、かなり近いものになってもおかしくないと思います。人間の脳も、それぞれのニューロン(神経細胞)が、次の層のニューロンへ、情報を渡していく構造になっていると考えられます。

異なるタスクを処理するマルチタスクラーニングの場合、それぞれのタスクに共通して貢献するような情報を、次のニューロンに渡すことが解決につながります。なぜかはわからないのですが、複数のタスクに共通する要因のほうが真である確率が高い、という法則が成り立つのです。難しい問題に対処する場合は、簡単なものの和で構成されることが多い、という法則も成り立ちます。

羽生:AIの学習って、伝言ゲームに似ていると思うんですよ。たとえば、「今日、東洋経済で取材を受けました」と最初に入力しても、100層目では、「明日、銀座でパレードがあります」みたいな全然違う文章になったりする(笑)。なぜこんなことが起きたかを調べると、中に全然意味を理解していない人がいるので、とりあえずその人をどけておいて、ちゃんと「今日、東洋経済で取材を受けました」という文章になるように、いろいろな工夫をしているんですよね。

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