「昔のソニー」をありがたがる風潮への違和感

古くて大きな会社に求められる役割を問う

かつてのイメージを引きずりすぎてはいないか(撮影:今井 康一)
ムラ社会の見えない圧力に負け、リーダーが中途半端な決断をしてしまう――。日本ではそういうことがよく起こる。著書『有名企業からの脱出 あなたの仕事人生が“手遅れ”になる前に』を上梓した経営共創基盤CEOの冨山和彦氏が世間を騒がせたニュースから、本質を読み解く短期集中連載。第2回は「昔のソニー」をありがたがる風潮に異論を唱える。

ムラ社会企業の経営

OBがソニーにモノ申す、という長期連載が以前、有名ウェブサイトで展開されていました。アクセスをたくさん集めて人気を博していたようでしたが、とても見られたものではありませんでした。“ソニーらしさ”とは、いったい何なのか。この人たちの言うとおりにやったら、ソニーはつぶれていたと思いました。

しかし、日本の大企業の多くが、これをリアルにやられている、というのが実情でしょう。日本企業は、相変わらずの共同体幻想の中に生きています。ムラ社会の調和、ムラ社会で適用しているルール、あるいはその空気に同調する圧力、精神的な依存……。これが、経営にも大きな影響を与える。実際、ムラ社会の社長が恐れるのは、波風が立ってしまうことです。社内闘争が起きること、社内の和が乱れることを恐れる。

共同体の中に調和が存在することが、すべてに優先してしまう。だから、経営判断や経営行動の意思決定には、共同体の和を壊さないという暗黙の前提がある。その中で戦略行動を取ろうとしてしまうのが、ムラ社会企業の経営なのです。

だから、戦略的選択肢は狭くなる。「聖域なし」などと言いながら、実際には「聖域だらけ」になる。今でもそれは変わりません。結局、経営者がそこに手を突っ込むことで、自分の社内の政治力を消費してしまうことを恐れるのです。下手をすると、自分の地位も危うくなるから。

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