「昔のソニー」をありがたがる風潮への違和感 古くて大きな会社に求められる役割を問う

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しかしこれは、日本の歴史的な体質ではないと思っています。戦後だってソニーとホンダが生まれているのです。新卒一括採用で、古くて大きな会社に入るという社会的同調圧力があったから、入っていただけだと思います。

優秀な人材の創造力を大企業は邪魔してはいけない

米国だって、1980年代はハーバードやスタンフォードを出た学生は、当たり前のようにIBMのような古くて大きな会社に入っていた。ところが、古くて大きな会社が日本企業の台頭で衰えたことで、マインドは大きく変わっていったのです。大きな会社、一流と言われる会社に入ったところで、金持ちになれない。人生の無駄だ、なんとかして自分で始めよう、という空気に変わった。これは日本も同じになってきている。

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だって今は会社なんて、簡単に起こせるからです。ベンチャーも増えてきた。特に最近は、高学歴インテリ系のベンチャーが増えている。東京大学の最も偏差値が高い理系の研究室の学生は、当たり前のようにベンチャーを自分たちでつくる。あるいは先輩がつくったベンチャーに入る。もっといえば、米国に留学して、向こうで起業してしまったりする。

いいことだと思います。大事なことは、どうやって優秀な学生が、古くて大きな会社に入らないようにするか、だと私は思っています。これは、国の政策として、とても大事なことです。

米国は、結果的にこれをやったのです。日本の大手企業の方々から、「トップオブトップスの学生が採用できない」と嘆きが聞こえてくることがありますが、私は結構なことだと思っています。そういう才能が何かイノベーティブなことをした時、一緒にビジネスをしていけばいいのです。それが、大きな会社の役割なのです。

本当に優秀な人材の創造力を、大きな会社は邪魔してはいけない。その本質に今こそ、フォーカスすべきなのです。

(構成:上阪徹/ブックライター)

冨山 和彦 経営共創基盤(IGPI)グループ会長

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とやま かずひこ / Kazuhiko Toyama

経営共創基盤(IGPI)グループ会長。1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学MBA、司法試験合格。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。共著に『2025年日本経済再生戦略』などがある。

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