なぜ三菱自動車は芯から腐ってしまったのか 共同体意識の強い組織が抱える根っこの病巣

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なぜ不正が続くのか。組織そのものに対して厳しい目が注がれている(撮影:今井康一)
三菱自動車がまたやらかしてしまいました。三菱自動車が日産自動車と共同開発した軽自動車の燃費データに不正が発覚したのが4月20日。今回は2000年、2004年のリコール隠しに次いで3回目の大きな不祥事になります。一部からは事業の継続を危ぶむ声も上がっています。2004年の不祥事で社内体制を刷新したはずなのに、なぜ再びこのような問題が生じてしまうのか。話の中身は、日本企業の組織的な問題点にまで広がっていきました。

 

藤野:日本の製造業のまじめさは、いったいどこに行ってしまったのでしょうか、と思わず嘆息したくなる、今回の不正発覚でした。

中野:三菱自動車って2000年と2004年にもリコール隠しという不正を行って、特に2004年の時は、会社の存続すら危ぶまれる状況にまで追い込まれましたよね。しかも燃費データ計算の法令違反は1991年から社内に伝承され続けてきたとの事実も判明していて、これはもう組織的な問題としか言いようがないですね。経営者の判断で不正が続けられたというよりも、まさに会社ぐるみの不正問題ですよ。

組織的な歪みなのか、緩さがあったのか

渋澤:この前、私の曽祖父にあたる渋沢栄一の『論語と算盤』で「合理的な経営」という節を読んでいたのですが、ちょっと興味深い一節がありました。意訳すると、3つのダメ経営者のパターンあるということですね。何かというと、第一に取締役や監査役といったポストに名を連ねたがる人。第二は好人物だけれども経営手腕のない人。第三が会社を利用して自分の栄達を図る人。

で、第一の人物は希望が小さいので、大した実害にはならない。第二の人物は部下の善悪を識別したり、帳簿をチェックしたりする眼力もないため、知らないうちに、自分の立場が窮地に追いやられてしまう恐れがある。ただ、この2パターンは、故意に悪事を行うものではないので、まだ許される部分はあるけれども、第三の人物は株価を吊り上げておかないと気が済まず、結果、不正会計に手を染めたり、虚偽の配当を行ったりするなど、不正の温床になる恐れがある。そんな話なのです。まさに第三のケースに当てはまるような人物が三菱自動車の組織内にいる、ということなのかも知れません。

中野:三菱自動車の企業体質に、不正の温床になりやすい部分があるのかもしれませんね。三菱自動車って、元は三菱重工の自動車部門で、1970年に分離独立して今に至るわけですが、当時、重工から出向させられた人たちにとっては、忸怩たる思いがあったのではないでしょうか。しかも2004年の不正以降、三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行の三菱御三家支配が強化された結果、組織的な歪みが大きくなったとも考えられます。

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