なぜ三菱自動車は芯から腐ってしまったのか 共同体意識の強い組織が抱える根っこの病巣

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渋澤:今回は三菱自動車の不正がクローズアップされましたが、私は東芝問題も含めて日本企業の不正は、やはり日本的な組織に大きな根っこがあると思っています。その最大の原因は、雇用がフレキシブルではないことでしょう。終身雇用制度が崩壊したとか言われていますが、それでも日本の大企業は戦後の高度成長時代のモデルである終身雇用制度をまだ維持しています。ただ、これは組織の新陳代謝が悪化するという点において、どうしても不正の温床になりやすいのではないでしょうか。

中野:終身雇用制度だから、日本企業は共同体意識が非常に強い傾向があります。会社と人生を一致させてしまうのです。何しろ、大学を卒業して22歳くらいで会社に入り、場合によっては系列会社への出向はあるかも知れませんが、基本的には同一企業グループ内で働き続け、60歳で定年を迎える。その後もOB会なんかが定期的に催され、それこそ死ぬまでずっと会社と人生を共にする。今はそこまで強烈ではないかも知れませんが、私の父親の時代なんかは、まさにそうでした。

今も20世紀からの大企業は、そのカルチャーをどこかに残しています。ただ、このように共同体意識の強い組織は、ひとたび問題が生じると、何としてでも組織を守ろうとする防衛本能が強烈に働きます。そして、組織を構成している一人ひとりの健全な判断力はどこかに葬られ、皆で一緒に行動すれば悪くないとばかりに、不正行為に加担してしまう。

低い人材流動性、強すぎる人事部

藤野:日本の製造業のパフォーマンスって、今や非製造業よりも悪いくらいなのですが、その原因のひとつは、確かに人材の流動性が低い点が挙げられるでしょう。人事の配置転換はあくまでもグループ内のみですし、ましてや海外企業から人が入ってくるなんてことは皆無に等しい。外部から人が入って来なければ、組織はどんどん密室性が高くなるため、コーポレートガバナンスを含めた企業の透明性が低くなり、不祥事が起こりやすい。

かたや今、流通業界はぐちゃぐちゃに人が動いていて、コンビニエンスストア業界などは、セブンイレブンの商品部長がローソンに移籍する、という動きが現実に起こっています。ファミリーマートの社長は、元ファーストリテイリングの副社長で、経営支援会社リヴァンプの社長を務める澤田貴司氏が就任しましたし、ローソン社長の玉塚元一氏(6月より会長CEO就任予定)は、これまたファーストリテイリングの社長だった経歴の持ち主です。

インターネットビジネスでも、楽天の実質的ファウンダーの一人と言われている小澤隆生氏は今、ヤフーの執行役員です。このように、中核人事がどんどん移動していて、流通やサービスは大きく変わりつつあります。やはり伸びている業界を見ると、他業態からどんどん人が入ってきているのです。

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