三菱自動車の不正行為が株式市場に水を差す 株価上昇への期待が高まっていただけに残念
日経平均株価が1万7000円を回復するなど、これまでの弱気一辺倒の動きに変化の兆しが見られる。市場では、円高に歯止めが掛かっていることや、財政出動への期待から株価上昇を指摘する声も聞かれている。しかし、事態は流動的かつ不透明である。
安倍首相は、7月の参院選に合わせて衆院選を実施する「衆参同日選」を見送る意向を固めたと報じられている。熊本での地震および低迷する景気への対応を優先することにしたもようで、市場の一部で想定されていた「消費増税見送りについて国民の信を問う」ための衆参ダブル選挙の実施はなくなったことになる。
懸念される地震の深刻な影響
証券関係者は衆参ダブル選をテコに株高になることを期待していたが、はしごを外されたといえる。熊本で地震の被害にあわれている方々にはお見舞いを申し上げるが、今回の安倍首相の決断は、いかに地震が深刻な影響を与える可能性が高いかの証左である。サミットを前に、さまざまな準備が進められる中、今回の地震は直接・間接的にサミットの開催などにも影響が出る可能性も否定できない。
先のG20でも合意された積極的な財政出動についても、今回の地震の影響が出るかもしれない。また今後の国会運営についても、震災対応を優先すべきとの方針で一致したもようであり、環太平洋経済連携協定(TPP)の承認や関連法案の今国会成立が見送られることになるなど、国会運営にも大きな影響が出ている。自民党内には「熊本の地震の影響などを見極めた上で、首相は最終的な判断を下す」とし、解散の可能性は残っているとの見方もあるようだが、現実的には難しくなったといえる。
一方、株価上昇に向けた期待感が高まっていた中で出てきたのが、三菱自動車が燃費試験に関する不正行為を行っていたとの報道である。20日の株式市場は、この報道が出ると急速に上げ幅を縮め、伸び悩んで引けている。東芝に続く大手企業の不祥事・不正に対して、投資家が株式投資離れを起こす可能性もあり、株式市場に新たな不安要因が加わったといえる。
まして、3月期の企業決算の発表が今後本格化する。その内容を見極めたいとする動きが強まることが想定され、上値を買う動きは控えられるだろう。その上、最近の株価の乱高下を嫌気した個人投資家が、いったん株式投資から離れる動きが加速することも想定される。企業不祥事と株価の乱高下は、個人投資家に限らず、あらゆる投資家の投資意欲をそぐものである。円高の動きが鎮静化しつつあっただけに、このような不祥事の発覚は非常に残念である。
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