円高で企業収益や物価はどのくらい下がる? シミュレーション!アベノミクスの正念場

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訪日観光客の爆買いも円高で減っていくのか(撮影:尾形文繁)

ドル円レートは2015年末には1ドル=120円程度だったが、中国経済の減速懸念、世界的な金融資本市場の混乱に伴うリスク回避姿勢の高まり、米国の追加利上げ観測の後退などから、2016年に入って円高ドル安が大きく進行した。足元では、安倍首相の為替介入に否定的な発言や、米国のルー財務長官の最近の円高を肯定する発言もあり、1ドル=108~109円台で推移している。

アベノミクス始動後の3年間、ほぼ一貫して円安基調が続いてきたため、急激な円高は日本経済を大きく変える可能性がある。特に懸念されるのが企業収益、物価への悪影響である。

過去3年、円安が企業収益と物価を押し上げた

法人企業統計の経常利益(季節調整値)は2012年10-12月期から2015年10-12月期までの3年間で39.2%の大幅増加となり、過去最高益を更新する企業が相次いだ。また、消費者物価は2013年4月に導入した異次元緩和、その後の円安、消費税率引き上げの影響などから3年間で約4%上昇し、消費税率引き上げの影響を除いても上昇率は2%を超えている。2015年度入り後はゼロ近傍の伸びとなり2%の物価目標は達成されていないが、少なくとも15年以上続いたデフレ状況からは脱しつつある。

企業収益の改善と物価上昇を支えた大きな要因は円安だ。安倍政権発足時のドル円レートは80円台だったが、2013年4月の日銀の異次元緩和の導入、2014年10月の追加緩和をきっかけに円安が大きく進行し、2015年中は概ね120円台での推移が続いた。

円安が製造業に大きな恩恵をもたらすことは言うまでもないが、通常は非製造業にとって円安は輸入コストの増加を通じて収益の圧迫要因となる。しかし、最近はコストの増加分を国内の販売価格に転嫁できるようになっているため、円安下でも非製造業の収益は堅調だった。対外資産からの利子・配当の受取額が円安によって膨らんだことも企業収益の押し上げに寄与した。

ニッセイ基礎研究所のマクロモデルを用いて、アベノミクス始動後の円安が経常利益、消費者物価の押し上げにどれだけ寄与してきたかを試算すると、3年間の累積で経常利益が14.8%、消費者物価が1.5%となった。過去3年間の上昇分のうち、経常利益の4割弱、消費者物価の7割弱が円安によるものだったということになる。

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