日銀短観の為替前提が示す目先の波乱要因 「気概」が感じられない日本企業が心配になる
4月1日(金)に、3月調査の日銀短観が公表され、これが国内株価の大きな悪材料となった。その理由として、まず企業の景況感を示す業況判断DIの悪化が挙げられる。大企業製造業の業況判断DIは、12月調査:12→3月調査:6→先行き見通し:3と、低下傾向にある。大企業非製造業もそれぞれ25→22→17といった具合だ。
加えて、設備投資が縮小する見通しとなっている。全規模全産業合計の設備投資計画(土地投資を含みソフトウエアを含まない)は、2015年度は前年比8.0%増であったものが、2016年度は4.8%減と、大きくカットされる予定だ。ただ、日銀短観の解釈は簡単ではない。確かに業況判断DIの悪化や設備投資計画の縮小は悪材料ではあるが、そうした暗い状況は、事前にある程度予想されていたため、市場にとって驚きではなかった。
株式市場に打撃を与えたのは、短観の回答企業による為替前提だと考える。2016年度の前提(大企業製造業に限る)は、平均値で117.46円となっており、現水準より大幅に円安が想定されていたからだ。
米ドル円相場に対し神経質な展開が続く
この甘い為替前提が意味することは、二つあると考える。
一つは、今後も国内株式市場が米ドル円相場の動きに一喜一憂し、波乱含みの展開にならざるをえない、ということだ。日本円に換算した主要国の株価指数の動き(すなわち、各国の株価指数と通貨の対円相場の動きを合わせたもの)をみると、ロシア、ブラジルなど主要新興国は1月に底入れして回復に向かい、欧米諸国は2月に底をつけて上昇軌道に向かっている。
それに比べて、日本も2月12日の底値からは株価が持ち直しているが、出遅れ感が強い。その日本円換算の株価指数を、今年初を100として指数化してみると、90を下回っているのは、日米欧(ユーロ圏平均)およびBRICs諸国の中で、中国と日本だけだ。この日本株出遅れの背景は、以前からすでに「為替恐怖症」の日本市場が、足元の米ドル円相場の軟化をみて、輸出企業の収益下方修正懸念を警戒しているためと推察される。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら