75円まで円高が進んでも不思議ではない 4月以降の波乱に今から備えておくべきだ
注目されていた日米欧の中銀の金融政策の方向性が出揃った。欧州中央銀行(ECB)は市場の予想を上回る内容の緩和策を決定したが、日銀は現状維持、米国連邦準備制度理事会(FRB)も利上げ見送りとなり、市場の予想通りだった。これらを受けて株価は上昇し、市場には楽観的な見方も徐々に広がりつつあるが、4月以降の相場急変リスクに注意が必要だ。
中銀の「壮大な実験」に付き合うリスク
10日のECB理事会では、市場の予想を超える緩和策だった。かなり踏み込んだ印象があるが、これで後戻りできなくなったとの印象のほうが強いというのが筆者の感想だ。つまり、結果が出るまでマイナス金利や量的緩和を推し進めるとのECBの強い意思を感じる一方、ある時点で結果が出なかった場合の悲惨な状況も想定しなければならないということである。これは日銀の政策にも同じことが言える。
黒田総裁は、「必要であれば、追加緩和を行う」との姿勢を崩していない。マイナス金利の効果はすぐに判定できるものではなく、時間がかかるだろう。しかし、その政策が万が一機能しないものであったときにリスクは甚大である。そうならないことを願うが、政策自体が歴史にないものであり、まさに「壮大な実験」である。政府が主導したその実験もリスクを背負っているのは、いうまでもなく国民である。うまくいけば問題ないが、そうでない場合に常に備えておくことが肝要である。
この点では、FRBは一枚も二枚も上手である。景気指標がよいことも追い風といえる。今回の米国連邦公開市場委員会(FOMC)については、今年の利上げペースがこれまでの年4回から2回に引き下げられ、ドル安が進行していることが、米国株にポジティブに作用している。また世界情勢や金融市場動向、経済指標などを考慮しながら慎重に利上げを検討する姿勢を示しており、市場にはハト派的な態度を明確にしたといえるだろう。
このような状況の中、米国株の上昇が鮮明になりつつあり、市場でもポジティブな見方が広がり始めている。その結果、米国株のボラティリティが低下している。市場関係者や投資家が注目しているのはVIXだ。VIXは「ボラティリティ・インデックス」の略で、S&P500を対象とするオプション取引の値動きを基に算出されている。一般的には、VIXは投資家心理を示す指標とされており、「恐怖指数」とも呼ばれている。
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