75円まで円高が進んでも不思議ではない 4月以降の波乱に今から備えておくべきだ
VIXは平時には10~20の範囲で変動するが、相場が急変した場合には急伸する傾向があり、その多くの場合で株価は急落している。過去を振り返ると、1997年10月のアジア通貨危機の際には38.20まで上昇し、1998年8月の ロシア通貨危機の際には45.74をつけている。また2001年9月の米同時多発テロの際には43.74、2002年7月のエンロン不正会計事件が発覚した際には45.08、2003年3月の米国によるイラク侵攻時には34.69、そして2008年10月のリーマンショック時には過去最高の89.53をつけている。2011年9月の欧州債務危機の際にも48.00まで上昇していた。
このように、VIXが急伸した際、いずれのケースでも株価は大きく下落している。むしろ、注意したいのは、これらの事象が起きる前のVIXが軒並み20を下回り、低位で安定していた点である。いまは15を下回る水準にまで低下しており、市場に安心感が広がっている。しかし、オプショントレーダーからすれば、このようにボラティリティが低いときは、オプションの買い場である。将来の市場の急変に備えるコストが非常に低いときに、オプションでヘッジしておけば、その後の市場の急変でむしろ収益を獲得できる。VIXが低いのは、今の市場の状況を反映しているのにすぎない。将来の株高を意味しているわけではないことを理解しておくべきであろう。
固定観念を持たず過去の円高局面に学べ
金融政策が今後も機能するかについては、市場でも議論がある。特にマイナス金利については、上述したように経験がなく、どのような効果があるかは不明。3月末は決算期末であることもあり、株価水準を維持したいとの思惑もある。しかし、日本株は為替相場の影響を受けやすい。ドル高基調から円高基調に転換したことを考慮すれば、目先はなんとかしのげても、長期的には円高の影響は免れようがない。
ドル円の平均的な上昇期間は3年であることはすでに本欄でも指摘した通りであり、当面は円高に進まざるをえない。過去のドル円の調整場面を振り返ると、平均で40カ月ほど継続し、下落率は40%におよぶ。このような変動になれば、2018年ごろまで円高基調が続き、最終的には75円程度まで円高が進むとの試算になる。現時点でこのような変動は想定しづらいが、昨年までの円安局面では75円から125円まで、50円も円安が進んでいるのである。その基点に戻っても何も不思議ではない。
固定観念を持たず、まずは過去データを頭に入れた上で市場動向を見ていくことが肝要である。上記のVIXの急伸や円高は、過去の市場で実際に起きていることである。歴史は繰り返されるのであり、楽観しているときがいちばん危ない。4月以降の波乱にいまから備えておくべきと考えている。
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