円高で企業収益や物価はどのくらい下がる? シミュレーション!アベノミクスの正念場

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円安の一巡はすでに企業収益に悪影響を及ぼしている。2015年10-12月期の法人企業統計の経常利益は前年比マイナス1.7%と4年ぶりの減少となった。非製造業は増益を確保したが、製造業が2015年7-9月期の前年比マイナス0.7%から同マイナス21.2%へと減益幅が急拡大したことが響いた。

ドル円レートは2014年10-12月期から2015年7-9月期まで前年比で10%を超える円安となっていたが、2015年10-12月期は5四半期ぶりに一桁の円安にとどまった後、2016年1-3月期は15四半期ぶりに前年よりも円高水準となった。

また、日銀短観2016年3月調査では、事業計画の前提となっている2016年度の想定為替レートが大企業・製造業で1ドル=117.46円となり、アベノミクスが始まってから初めて足もとのレートよりも円安水準となった。これまでは、現状が企業の想定レートよりも円安となっていたため、収益計画が上振れる傾向が続いてきた。

輸出のみならず訪日外国人の消費にも打撃

2016年度の経常利益の当初計画は前年度比マイナス1.9%の減益計画(大企業・製造業)となっているが、現状程度のドル円レートが続いた場合、収益はさらに下振れる可能性が高いことになる。

円高による悪影響は製造業のほうが大きいが、円安を追い風とした訪日外国人急増の恩恵を受けてきた旅行業、宿泊業、小売業などの非製造業も大きな打撃を受ける可能性がある。

もちろん、訪日外国人増加の背景には円安に加えて、アジアの中間所得者層の増加、ビザの発給要件緩和、LCC就航の増加などがあるため、円高に振れたからといって即座に訪日外国人数の減少につながるとは限らない。

しかし、少なくとも一人当たりの消費額は為替レート変動の影響を強く受けるため、円高によって減少することは避けられないだろう。実際、国際収支統計の旅行収支の受取額を訪日外国人数で割ることにより一人当たりの消費額を試算すると、最近は前年比でマイナスとなる月が多くなっている。

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