つまり、医局派遣が地域の医療を支えているという事実があるため、医局員が少なくなると地域の病院に医師が派遣することができなくなり、その地域の医師不足をも引き起こしかねないのです。
また、医局員が多ければ多いほど組織は大きくなり、いろいろな教育システムが作れますし、積極的に研究もできます。それゆえ医局員は基本的に多いほうがよいのです。
ただ、これは組織を運営する側を中心に考えた場合のことです。医局員は若いときは激務・薄給で、しかも本院から随分と離れた関連病院に派遣されることも受け入れなければなりません。ですが、結婚した、子供が生まれたといったときに、来年はどこに飛ばされるかわからない中で、自由が利かないことに徐々に不満を覚えます。
大学医局側としても、若い医局員ほど遠くの関連病院を経験させ、ベテランの先生は本院か、もしくはある程度慣れ親しんだ関連病院で異動をなくすなどの工夫はしています。ただし医局員である以上、教授の人事決定には基本的に従わないといけません。
おそらく私の会社に相談をいただくケースも、年齢的には35~40歳くらいのある程度経験を積んだ医師が多く、転職先を見つけるのは比較的簡単です(求人側も一定の経験がある若い先生を欲しがる傾向にあるため)。しかし、厄介なのは、ここから。退局に向けての大学側との交渉です。
退局に向けた教授との攻防
転職をされたことがある方はおわかりでしょうが、その活動はもとより、退職を切り出し、出勤の最終日までどう過ごすかというのは、たいへん気を遣いますよね。私も転職は3回経験していますが、退職の意向を上司に言い出すまでと、退職までの1カ月くらいは本当につらかった思い出があります。
では、大学を退局する場合、どのようなスケジュールが考えられるでしょうか?
退局を切り出す場面ですが、これは教授との面談の場合が多いようです。というのもこの面談というのは、来期の医局人事を決める参考になることが多いからです。大学にもよりますが、いちばん重要なのは来春に向けた教授との面談。時期は早いところで11月、遅いところで1月くらいに行われます。そこである程度医局員の現在の状況や希望などを聞きながら、教授が来年どこに派遣するかを決めるのです。
教授としては、来期も戦力として期待し、次の派遣先などを決定しようとしているわけですから、そこで「辞めます」というのは、なかなか勇気のいることです。教授に理解をもらうためにはもっともらしい理由が必要となるのです。
教授もある程度、理解はしていると思いますが、やはり建前というのは必要です。
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