前回のコラムでは、「医師の転職事情」として、主に大学医局を辞めるときのことをお話ししましたが、今回は大学医局に属さない医師の転職事情をお伝えしたいと思います。
大学医局に属している医師は、どこの病院に派遣されていようと所属は大学になるわけですから、身分は基本的に保証されています。したがって給与の低さや勤務に対する不満こそあるにせよ、自分から退局を希望しないかぎり、大学を辞めさせられるようなことはあまりありません。
一方、医局を辞めた医師は大学という後ろ盾がなくなるため、どこかの市中病院で勤務する場合は、医師自身と医療機関の直接契約という形を取ることになります。一般の方と同じく労働市場に身を置くことになるわけです。
医師の労働市場という考え方は、あまりピンとこないかもしれません。大学医局に所属する医師が多かった時代においては、医師の転職ということが一般的ではなく、医師が自分で職場を選ぶということは、医局を辞めて開業をする機会くらいしかありませんでした。しかしながら医局の力が弱くなり、医局に属さない医師が増えている今、需要(=医師を採用する側)と供給(=医師側)の関係を知らないと、転職で失敗することもあります。
全国的に医師不足ではあることに変わりはありませんが、医師が多いところと少ないところ(いわゆる偏在)は確かに存在します。ここでは主に“地域”と“科目”における偏在を中心に、医師の労働市場を見ていきたいと思います。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら