GDPは経済活動を表す総合的な指標ではあるが、様々な問題を抱えている。2008年にOECDは、当時のサルコジ仏大統領の提唱で、GDPに代わる豊かさの指標を作成する委員会を設置した。残念ながらサルコジ氏は大統領選挙で敗北し、こうした見直しの機運は後退してしまったが、成果はスティグリッツ委員会の報告書として残っている(注)。結論から言えば、総合的な指標を作るのは簡単ではないということのようだが、GDPの持つ様々な問題が整理されており興味深い。
本来は固定資本減耗を控除した指標が望ましい
スティグリッツ報告書にも触れられているように、GDPの大きな欠陥の一つは生産を行うためのコストが十分反映されていないことにある。本来は生産に必要なコストとして固定資本減耗を控除したNDP(純国内生産)を指標にすべきなのだが、通常は固定資本減耗の推計は難しいのでGDPが便宜的に使われている。短期的にはGDPとNDPの動きはほとんど変わらないが、長期間たつと日本のGDIの構造で見たようにかなりの乖離が出てくる。
人々も政府も成果を測る物差しに合わせて行動するようになるから、どのような領域でも、成果を正しく測ることは重要だ。建築に使う物差しが歪んでいれば出来上がった建物が歪んでしまうように、社会の発展を測る物差しが不正確であれば社会も歪なものになってしまう。しかし、残念ながら完璧な物差しを作ることは簡単ではないので、我々はGDPという物差しに歪みがあるということを考えて行動しなくてはならないのである。
(撮影:尾形 文繁)
(注)”Mis-Measuring Our Lives : Why GDP Doesn’t Add Up” Joseph E. Stiglitz, Amartya Sen and Jean-Paul Fitoussi (日本語訳「暮らしの質を測る」きんざい2012年刊)
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