貿易統計によれば、2013年1月の輸出額は4兆7991億円で、対前年同月比6・4%増と、8カ月ぶりの増加となった。
しかし、これは円安で日本経済へのプラス効果が生じ始めたことを意味するものではない。これまで強調してきたように、数量要因と価格要因に分解して見ることが重要だ。
輸出数量指数は、対前年比6%減と、12年6月からの減少がいまだに続いている。これまで述べてきたように、輸出数量の減少は、国内生産に対する負の影響を意味する。実質GDPに対する影響もマイナスだ。円安が進展しているにもかかわらず、それが経済を活性化する効果を発揮していないことに、注意が必要だ。
輸出額の対前年比がプラスになったのは、輸出価格が上昇したためだ。為替レートは、12年1月の1ドル=77・3円から13年1月の86・9円へと、12・4%の円安になった。これを反映して、輸出価格指数の伸びは13・1%のプラスになった。このため、数量指数の伸びがマイナス6%であるにもかかわらず、輸出価額の伸びがプラスになったのである。
したがって、これがもたらすものは、単なる輸出企業への所得移転でしかない。ただし、事態はもう少し複雑である。なぜなら、円安は輸入価格を上昇させ、原材料の輸入額を増加させるため、輸出産業であっても、原材料の輸入が多ければ、収益が悪化する場合があるからだ。この問題については後で見ることとし、その前に輸入の動向を見よう。
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