なお、以上で述べたのは、輸出・輸入数量が不変であり、またドル建て価格も不変の場合だ。実際には、輸入先国の景気後退で輸出数量が減少している。いま起きているのはそうしたことである。
現実の値はどの程度だろうか。輸出比率aは、多くの産業で2分の1程度だ。化学産業の場合、cの値は7割強程度である。その中での輸入比率bの値は分からないが、かなり高いと考えられる。鉄鋼業の場合、cは9割程度だ。そしてbの値はかなり高い。したがって、自動車産業は円安で営業利益が増えるが、化学産業は減る可能性が高く、鉄鋼業は減る可能性がもっと高いと考えられる。
他方、サービス産業や電力、食品などの内需型産業は、輸出比率aが0に近い。電力ではbcの値がかなり高いので、図の縦軸の上のほうに位置する。つまり、円安で営業利益は大きく悪化する。一般のサービス産業の場合は、bは、電気料金を通じる間接的なものだ。したがって、縦軸上にはあるが、下のほうだ。ただし、cの値が大きいと、GHで表される利益の減少幅は無視できない。
2月は1月よりさらに円安が進んでいるから、以上で述べた傾向が進む。それがいつまで続くか分からないが、少なくとも当面の間の日本経済がこの要因で動かされることは事実だ。したがって、この問題に正確な理解を持つことは重要である。
(週刊東洋経済2013年3月9日号)
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