円安で利益が減る輸出産業もある
円安が進むと、輸出産業の利益は増大すると考えられている。しかし、円安によってあらゆる輸出企業の利益が増大するわけではない。原材料の輸入が多いと、円安で利益はかえって減少してしまうのである。以下では、これについて分析しよう。
売上高をRとし、そのうち輸出がaRであるものとする。他方、売上原価はcRであり、そのうち輸入原材料がbcR、賃金などが(1‐b)cRであるものとする。営業利益は、R‐cRだ。ここで、ドル建て価格は輸出、輸入とも不変であるが、為替レートが円安になり、その結果、円建て価格がeの率だけ上昇するとする。すると、営業利益は、a(1+e)R+(1‐a)R‐[bc(1+e)R+(1‐b)cR]となる。円安による増加額は、(a‐bc)eRだ。
これが正になる領域(円安で営業利益が増大する領域)は、図の点線より右下の部分だ。図に、c=0・8の場合と0・9の場合を示した。cの値が大きくなるほど、円安で営業利益が拡大する領域は狭くなる。
円安で利益が増大するかどうかは、a、bの値によって大きく影響される。自動車産業は、aの値が大きく、bの値があまり大きくない。したがって、円安により利益が増える。鉄鋼や化学のような素材型産業は、bの値が大きい。したがって、円安により利益が減る。電力やサービス産業は、aの値はほぼゼロだ。したがって、円安により利益が減る。
所与の点からa=bc線まで引いた水平線の長さが、円安による利益の変化を表している。例えば、鉄鋼産業がAの位置にあるとすれば、利益減少の絶対値は、ABにeRを乗じたものとなる。
売上原価中の輸入比率bを所与としたとき、売り上げ中の輸出比率aが大きければ円安で利益が増えるが、aが小さければ利益は減る。また、売り上げ中の輸出比率aを所与としたとき、売上原価中の輸入比率bが大きければ円安で利益が減るが、bが小さければ利益は増える。
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