主要先進国の中央銀行が金融緩和競争を繰り広げている。日本銀行も、10月30日に追加金融緩和措置を決め、国債購入基金を11兆円拡大した。
しかし、どの国でも、目的とされている効果は実現していない。
日本の金融政策の目標は、物価上昇率を1%以上にすることだが、数次の緩和策にもかかわらず、その目標は到底達成できそうにない。それどころか9月の消費者物価指数では、テレビ、カメラ、パソコンなどを含む「教育娯楽用耐久財」の価格が、対前年同月比で約1割も下落した。
アメリカの場合、目標は失業率の引き下げだ。しかし、雇用情勢は一向に改善しない。欧州中央銀行(ECB)の金融緩和は、南欧諸国の国債購入のためだ。ユーロ危機はいまのところ中休み状態だが、ECBの買い上げだけで解決できるような問題ではない。
では、金融が実体経済に影響していないのかといえば、そうではない。世界的な資金の流れに大きな変化が生じており、それが実体経済に予測できなかった影響を与えている。
まず、長期金利の二極化現象が生じている。ユーロ危機により、スペイン、イタリア、ギリシャなどの南ヨーロッパ諸国からは資金が流出し、長期金利が高騰した。流出した資金は日独米に流入し、長期金利を記録的な水準にまで引き下げている。また、新興国からの資金流出も生じている。こうした動きは、しばしば「リスクオフ」と呼ばれる。
日本への影響も顕著だ。日本の国際収支において、証券投資収支は1992年以降(2004、06、07年を例外として)、継続的な赤字(資本流出)だった。ところが、11年においては、約13兆円という巨額の黒字(資金流入)を記録した。
しかし、だからといって、日本国内の設備投資が増えたわけではない。海外から流入した資金は、国債の購入に向かい、「国債バブル」を引き起こしている。また、海外にも向かっている。日本の対外直接投資は、11年に急増した。
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