無制限の金融緩和は可能か? マネーストック増えず、マイナス金利も逆効果

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安倍晋三自民党総裁の「無制限に金融緩和」発言が波紋を広げている。マーケットはこれに反応し、円安になって株価が上昇した。

今年2月、日本銀行が追加金融緩和を行ったときも、円安と株高が生じた。これを見て、「日本経済に転機が訪れた」との議論がなされた。しかし、この傾向は結局、長続きせず、一時的なものに終わった。今回の騒ぎも、同様のことになる可能性が高い。とはいえ、無視できぬ要素もある。そこで以下では、この問題について論じる。今回は、無制限の金融緩和は技術的に不可能であることを述べる。そして、日銀引き受けによる財政支出拡大は、日本経済を破壊することを次回で述べたい。

この議論を理解するには、金融政策として具体的に何が行われているかを知る必要がある。「輪転機を回して日銀券を刷る」と言うが、これは比喩である。現代の経済では支払いの大部分は預金で行われているので、それを操作している。

ここで、「お金」として、次の二つのものを区別する。第一は、「マネタリーベース」だ(かつては「ハイパワードマネー」と呼ばれていた)。これは、日銀券と銀行の日銀当座預金の和である(日銀の債務)。第二は、「マネーストック」だ(かつては「マネーサプライ」と呼ばれていた)。これは、日銀券と銀行預金の和である(金融機関全体としての債務。なお、「預金」の範囲をどう取るかで、いくつかの定義がある)。

これらをどう増やすか? 教科書には、次のように書いてある。

(1)マネタリーベースの増加は、銀行が保有する国債を日銀が買い入れることで行われる。代金として、銀行が日銀に持つ当座預金残高が増える。

(2)当座預金が増えると、銀行は貸し出しを増やす。その一部は預金となって返ってくる。それを用いてさらに貸し出しを増やす(信用創造過程)。こうしてマネーストックが増える。

(3)マネーストックの増加が、物価上昇、失業率低下、投資増加などの効果を発揮する。

問題は、このような教科書どおりのメカニズムが働くかどうかだ。

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