一方米国経済を見てみると(図2)、日本のようにはっきりとした固定資本減耗の長期的な上昇は見られない。
日本経済の不振の原因が、デフレで名目GDPが拡大しないことにあるのではないことは、固定資本減耗の比率上昇がデフレに陥るはるか前から起こっていることでわかる。
日本の企業収益の圧迫は、最近10年間の平均で見ても、日本の方が米国よりも経済成長率が低いにも関わらず、民間企業設備投資の名目GDPに対する比率が日本は13.7%程度と米国の10.5%よりも高いことが原因であり、固定資本減耗が膨らんでいることが問題なのだと考えられる。
三面等価の原理への誤解
設備投資が所得を圧迫するという話をすると、経済学を勉強したことのある人ほど奇異に感じるようだ。高校の政治・経済でも習う「三面等価の関係」があるので、国内の生産=所得=支出が常に成り立っているからだ。
GDP(国内総生産=国内総支出GDE)の需要項目の一つである設備投資を増やすと、国内総所得(GDI)も同額だけ増加する。しかし実は通常所得として使われるのはGDIではなくてNI(国民所得)で、例えば、税や社会保険料の負担を合わせた国民負担率の計算に使われる分母も国民所得だ。GDIにはNIに含まれていない固定資本減耗分が含まれているので、設備投資の増加はNIとGDIに違いを生みだす。
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