日本でも、中間層の仕事がなくなる?

『ワーク・シフト』著者、リンダ・グラットン氏に聞く

グローバル化するほど同質性の魅力が高まる

グラットン:あなたが主張する戦略にも、リスクはあります。多国籍企業が育たないことです。

今や英国の法律事務所は世界を席巻しています。私の英国人の友人も、米国の法廷で仕事をしています。日本人も、島に孤立すると、世界とは競争できません。多国籍企業は、その国にポジティブな影響を及ぼします。それがなくなることは、リスクではありませんか。

渡邉:でも同質性の強みというものもあります。トヨタもコマツも、グローバル人材といいながら、実際には人材はほとんど多国籍化していない。日本で業績のいい会社は、みんなそういう会社です。

セブン-イレブン・ジャパンやユニクロもそう。取締役や主要な幹部は日本人で固め、トップに強権的な経営者がいる。セブン-イレブンは2週間に1回、全国から2000人の社員を集め、トップダウンで指示を出す。そういう企業が勝ち組企業になっています。

『ワーク・シフト』に書かれている、横の関係によるクリエーティブな組織というのは、一部のコンサルティング会社とか、クリエーティブな会社でしか生かせないでしょう。

グラットン:欧州では、自社をピラミッド型だと説明する企業は、聞いたことがありません。もっと自由度が高いと思います。

渡邉:日本はその形でこれまで成長してきたので、20年後まで、おそらく変わりにくいんです。『ワーク・シフト』には残念ながら、こうした日本の特殊性がほとんど描かれていません。

グラットン:欧州では、日本のことをよく理解できる本はほとんどありません。あるのは着物などの情報ばかり。日本はきわめて特殊で理解が難しい国です。

渡邉:でも、グローバル化するほど、逆にグローバル化していない部分の価値も高まります。

たとえば日本は失業率も欧米より低いし、犯罪も少なく安全です。そういう意味で、移民を受け入れないという方針を、私は評価しています。

グラットン:私は多様性によるメリットを研究してきました。シリコンバレーの起業家も半分はインド人、中国人です。だから閉ざされた状態の日本の未来には賛成しかねます。

でも、あなたが主張することもよくわかります。今まで多くの国へ行きましたが、こうした主張は初めて聞きました。これは10年後、20年後に答えが出てくる話です。ぜひ将来、再び議論したいですね。

(撮影:今井康一)

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