MITで失った自信、得た自信

レンガを積むが如く

新世代リーダーは、政治経済の分野だけに求められているわけではない。科学技術の分野にも、フロンティアを切り開く人材が必要とされている。当連載では、 航空宇宙工学という切り口から、新時代のリーダー像を探っていく。MITで航空宇宙工学の博士号を取り、NASAジェット推進研究所(JPL)への転職を決めた筆者が、MITでの日々を振り返る。
MITのキャンパスはチャールズ川に面している。その対岸にはボストンの街並みが広がる。

迷いと決断

僕は東大の大学4年生だった頃に、宇宙工学への情熱に駆られ、勢いに任せてマサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院へ願書を出し、幸運にも合格通知をもらった。しかしそれは、もろ手を挙げては喜べない、中途半端な合格だった。

前回の記事で説明したように、アメリカの理系大学院生の多くはRA(research assistantship)という仕組みによって学費を免除され、月に20万円程度の給料も支給される。しかしそのためには、先生に自分の能力を認めさせ、RAとして雇ってもらわなくてはならない。日本の大学のようにすべての学生をいずれかの研究室に配属される仕組みはないので、雇ってくれる先生がいなければ、研究の指導をしてくれる先生もいないという状況になる。

もし入学選考の時点で先生が雇いたい学生がいれば、その学生には合格通知と一緒にRAのオファーも付いてくる。優秀な学生には奨学金が付くこともある。しかし、僕がMITからもらったのはRAも奨学金もなしの合格だった。つまり「学費と生活費を合わせて年間600万円近いおカネを自腹で払うなら来てもいいよ」という、冷淡な合格通知だったのである。

だが、まだ手はあった。

先生たちは研究費が取れさえすれば、年度の途中でも新たに学生を雇い入れる。採用は先生が学生を個別に面接して決める。だからRAを持っていない学生たちは、あちらこちらの先生を訪ね歩いては、空いているRAのポジションはないかと「就職活動」をするのである。

僕もとりあえずは自腹でMITへ入学した後、「就職活動」をしてRAを現地調達するという手が残されていた。うまくいかないリスクはあるが、決して不可能な道ではない。そしてこの上なくありがたいことに、両親が1年間までなら学費をサポートしてくれると言ってくれた。親には一生頭が上がらない。

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