難民申請者の目前に広がる不法就労の闇市場 闇市場がいまや公共事業にまで広がっている

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川口・蕨両市にまたがる「ワラビスタン」コミュニティーができ始めたのは1990年代。観光ビザで日本にやってきたクルド人たちが同地域に住み始めたのがきっかけだった。定住資格のない不安定な立場ながら、20年あまりの歳月の間に、日本人との「共存」をめざす機運がコミュニティーの中に大きく広がっている。

それを物語る出来事は、2011年3月11日の東日本大震災後に起きた。仮放免者は居住している都道府県を離れる場合には政府の許可を取らなくてはならない。東北地方が大きな被害に見舞われているとの知らせをうけ、土木経験のあるクルド人たちが震災復興のボランティアとして、許可証を携えて被災地に向かった。テントで寝泊まりしながら、がれきの撤去作業などを行ったという。

被災地の一つ、陸前高田市に最初に到着したクルド人グループの一員、マフムト・チョラクも難民申請中で仮放免の身だ。今年4月には、大地震で被害が広がった熊本地域に、仲間のクルド人とともに車で乗り込み、被災地でボランティア活動を行った。

「入管がこれで在留資格をくれるとは思わない。ただ、被災者が気の毒だったから行っただけだ」。マフムトは、ボランティアの見返りを期待してはいないと話す。

「義を見てせざるは勇なきなり」

都内で小規模な建設会社を経営する木下顕伸社長。クルド人を雇うことについては、彼らが生活できるようにという思いやりだ、としたうえで、「義を見てせざるは勇なきなり」と述べた。そして、「現場とすれば、ウィンウィン(相互利益)の関係」と語った。

同社と契約している下請け会社は、約50人のクルド人を解体現場で雇っている。彼らの多くは6カ月ごとに更新する就労資格を持っているが、ロイターの取材によると、就労できない仮放免者も一部、含まれている。就労資格のない外国人を雇うと、雇用者は3年以下の懲役または300万円以下の罰金を科せられる。

日本の永住権を持っているクルド人が経営するさらに規模の小さな建設会社では、仮放免の友人や親せきを雇うことは頻繁にあるという。多くは日本人の会社が請け負わない、利益の薄い仕事を受けている。

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