難民申請者の目前に広がる不法就労の闇市場

闇市場がいまや公共事業にまで広がっている

生きるためには働かざるを得ない。マズラムは不法就労と知りつつ、道路の普請、下水道の工事、その他さまざまな現場で汚く危険な仕事に従事してきた。請け負った仕事が公共事業だったこともある。マズラムは、自分の毎日の仕事が日本の政府や市民のために役立っているのに、なぜ就労が認められないのか、という思いにかられることがしばしばある。

だが、どれほど彼が身を粉にしても、日本への定住という未来につながる扉が開くわけではない。

「日本政府は働いてはいけないと言うけど、外国人がいないと日本は困るって、みんなわかってる。建設の仕事も全然進まなくなる。政府は誰よりもそれをわかってる」。マズラムは建築現場で鍛えた日本語で早口に語った。

マズラムの兄と弟もまた仮放免の身でありながら、東京近郊で公共工事に従事したことがある。ロイターが取材した多くの仮放免中のクルド人の中で、30人以上が民間企業に雇われ、ビル解体の仕事をしていた。

懸念示す政府、企業は7割強が受け入れ支持

日本への定住を求める外国人をどう受け入れるべきか。その政策論議は始まって久しいが、世界の地政学情勢が大きく変化し、移民や難民が急増しているにもかかわらず、日本の対応は大きな進展を見せていない。

一方、出生率の低下と高齢化で、日本は1990年代前半以来の最大の労働力不足に見舞われている。にもかかわらず、安倍首相は昨年9月に国連で演説した際、日本には「移民を受け入れるより前にやるべきことがあり、それは女性の活躍であり、高齢者の活躍」だと強調した。

「(移民や難民の受け入れには)治安に対する不安がある。さらに国内の雇用を食ってしまうのではないかという懸念。そういうことも含め、まだ移民という言葉に対するアレルギーがある」。安倍首相の補佐官、柴山昌彦衆院議員は日本人の抵抗感について、こんな見方を示す。

しかし、企業側には、そうした抵抗感はほとんどない。ロイターが昨年10月に企業を対象に行った調査によると、中堅・大企業の76%が外国人単純労働者の受け入れについて「支持する」と回答した。

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