難民危機が覆い隠す欧州移民問題の真実

感情に流されず合理的に考えるべきだ

国境の近くで移民の登録を受け付けるドイツの警察官ら(写真:ロイター/Dominic Ebenbichler)

戦争で荒廃した中東からの難民がドイツに到着し、サッカーファンが横断幕を掲げて歓迎した。戦争や略奪の中を生き抜いてきた、絶望の淵にある人々にとって、ドイツは新たな「約束の地」だ。

英国をはじめとする国々は、彼らが自国の社会構造を壊滅的な危険にさらしかねない、と懸念を訴えている。対照的に「メルケル母さん」は、ドイツは本物の難民は拒まないと約束した。

今年はドイツに約80万人の難民がやってくると予測される。それなのに英国ではキャメロン首相が、3万人に満たない難民申請を大ごとのように言い立て、北海を越えてやってくる「人の大群」に警鐘を鳴らしている。英国はドイツよりも多民族、かつ開かれた社会だ。ロンドンは、ベルリンやフランクフルトと比較にならないほど外国人への偏見がない。しかも英国では移民が大いに役立ってきた。

現在のドイツは例外的

今のドイツ国内のムードは例外的な現象だろう。1930年代後半にはユダヤ人がドイツとオーストリアで生命の危険にさらされたが、ほとんどの国は手に余る難民を受け入れる覚悟ができなかった。裕福な米国も例外ではなかった。39年になってやっと英国が1万人程度のユダヤ人の子どもに入国を認めたが、英国内に引受人がいて両親を残してくる条件付きだった。

ドイツの寛大なムードはその暗い歴史と大いに関係がある。日本も歴史の重荷を負っているが、窮地にある外国人に対する日本人の態度は、ドイツと比べ消極的だ。

政治家やメディアは、今日の「難民」危機だけに焦点を絞っていて、より広い「移民」問題が覆い隠されている。悲惨な難民の家族が、略奪者的な密航請負業者や無法者たちの言いなりになって海を漂うイメージは、人々に同情や思いやりの感情をいとも簡単に喚起させる。

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