地中海を渡って来る難民を責めてはならない ヨーロッパが難民を受け入れるべき理由
[2日 ロイター] - この夏、小さな船やボートに乗って地中海を渡った難民や移民は25万人に上った。密航業者に手引きされ、壊れかけの漁船に乗せられた難民らは、地中海を北に進むよう指示され、国際航路に入ったところで助けを求める。
シリアやエリトリア、ナイジェリア、エチオピア、ガンビア、ソマリアなどからの難民たちは、先の見えない航海中、命を落とさないことだけを願っている。子どもが生き伸びるよう浮輪を用意する家族もおり、船の最上部に乗るために業者に余計に払う人もいる。船底には「人の重し」として多くが押し込められている。
難民たちには安全な方法などない
エジプトやチュニジアで調達された漁船に乗る費用がなければ、手作りのゴムボートで地中海を渡ることになる。ベニヤ板の床でゴム引きのキャンバス地が破れ、岸からわずか数キロ先で海に投げ出されるケースもある。こうした生きるか死ぬかの航海に乗り出すのは、難民たちには苦境から抜け出す安全な方法などないからだ。彼らは海で命を危険にさらし、そして無事に陸地にたどり着いても、そこで待っているのは南欧諸国の反感であることは分かっている。
われわれが目にしているのは、人々がより良い生活を探そうと世界全体を1つの場所として見る国境のグローバル化だ。この見方に賛同する人は少ないかもしれないが、難民危機が浮き彫りにしているのは、各国政府にそれを止めるだけの力がないことだ。
欧州連合(EU)は、難民を受け入れ先に送る手立てを簡単に整えられるだろうが、実際には、難民の命を奪っているシステムではなく、難民を責めている。相次ぐ難民の死が世論の怒りを喚起し、それによって救助活動が行われるようになるが、難民の流入が欧州の社会システムおよび警察システムを圧迫するようになると、今度は反発感情が生まれてくる。政治家たちは姿勢を硬化させ、難民の死がさらに増えるまで壁が築かれ、結局は振り出しに戻るのだ。