地中海を渡って来る難民を責めてはならない ヨーロッパが難民を受け入れるべき理由
各種調査によれば、欧州に流入する移民・難民の玄関口となっている南欧では、人口の約80%が、こうした人口流入を望んでいない。北欧の方が受け入れには前向きだ。難民危機に対する有権者の考えが、欧州の「強硬な」政策を形づくっている。そうした空気は、マケドニアでの難民に対する催涙ガス使用や、ハンガリーの首都ブダペストでの難民の駅立ち入り禁止措置などに見ることができる。
難民申請が認められなければ、彼らの行き場所はどこにもない。状況にまったく変化がなく、問題が急速に悪化している以上、解決策を変えるべき時が来ている。今年前半には、昨年1年分の2倍の難民が欧州に到達している。
移民は新たな国づくりにつながる
米国とは違い、欧州は移民に慣れていないため、一部の国は外部からの人口増加がもたらす成長を受け入れるより、内側からゆっくり死んでいくことを選んでいる。難民や移民の流入に最も強硬に反対する国々には、恐ろしい統計的現実がある。ハンガリーやラトビア、ウクライナ、ブルガリアなどは人口が減少し、高齢化が進んでいる。
現在の状況は、欧州から数百万人が海を渡り、米国や豪州やカナダを目指した70年前をほうふつとさせる。移民の波はいつでも恐怖や反感を生み出すが、最終的には新たな国づくりにつながる。
オーストリアでは先週、放置されたトラックの中から移民71人の遺体が発見された。今週に入り、世界の指導者からはようやく、これまでと違った反応が見えるようになった。国連の潘基文事務総長は「思いやりと慈悲心」を訴え、ドイツのメルケル首相は「移動の自由は欧州の基本原則の1つ」だと述べ、難民や移民を擁護した。フランスのバルス首相は、「亡命の権利がいずれの場所においても尊重されるようにするのが、われわれ全員の責任だ」と言明した。
それができないのであれば、移動の自由などは船と一緒に沈めるしかない。
執筆:ロバート・ヤング・ペルトン
*筆者はジャーナリストで、戦争に関する著書も。ウェブサイト「MigrantReport.org」の発行人で、民間団体「マイグラント・オフショア・エイドステーション(MOAS)」の戦略アドバイザーも務める。 *本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら