ノルウェーの戦時中の独裁的指導者、ヴィドクン・クヴィスリングはオスロ郊外の豪華な邸宅に妻と暮らしていた。その邸宅は今ホロコーストや宗教的少数派の研究のためのセンターになっている。
筆者は今年同センターを訪れ、1814年に公布されたノルウェー初の独立憲法に関する展示を見てきた。歴史、法律、哲学に通じた博識な学者らによって作られた、実に見識に富んだ進歩的な文書だった。
ノルウェー憲法にある驚くべき条文
ところが、同文書には驚くべき条文がある。第2条ではルター派であった同国での宗教の自由が宣言されているが、ただし書きとして「ユダヤ人による王国への立ち入りは依然禁止とする」とある。
興味深いのは、右記の条文が含まれている事実自体ではなく、なぜ含まれているかだ。その意図は人種差別ではなかった。むしろ問題とされたのは文化と信仰だった。ユダヤの信仰や慣習が、近代的かつ進歩的な西洋の価値観とは相いれないものと見なされたのだ。憲法起草者の一人の主張は、ユダヤ教では非ユダヤ教徒を欺くよう信徒に促している、というものだった。ユダヤ人は必ず「国家の内部における国家」を形成すると信じられていたのだ。
憲法の起草者はユダヤ人たちがほかの国々で長きにわたり迫害を受けてきたと知っていたはずだ。にもかかわらず、ユダヤ教とノルウェー憲法は相いれないものであると説明し、モーセの律法こそがユダヤ人の認める唯一の憲法であり、よって恐れるべきものであると主張した。それは今日、イスラムを批判する者たちがイスラム法(シャリーア)を恐れるのに、よく似ている。
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