コンピュータはどれだけ優秀な「投資家」か あのバフェットを超える日も近い?

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投資において人間の判断力をコンピュータが超える日が来る?(写真:Yellowi/PIXTA)

スウェドローとバーキンの新著『The Incredible Shrinking Alpha』は、投資の世界ではビッグデータ、高性能コンピュータ、学術研究を活用して高度な判断ができるアナリストが増えている、と指摘している。競争の激化により、「アルファを得るハードルがますます高くなっている」(アルファ=リスク調整後ベンチマークを上回る収益。個々の投資判断の成功度を測る尺度)というのだ。

この結論は重大な疑問を提起する。考えうるどんな投資戦略を取ったとしても、アルファはやがてゼロに行き着くのだろうか。もっと根本的には、賢い人間が増えコンピュータが高度化したおかげで、金融市場が真に完全なものとなり、私たちはすべての資産が正しく値付けされると信じて安閑としていられる日が、近々やってくるのだろうか。

投資判断はコンピュータに任せるべき?

こんな想像をかき立てる状況を、「金融特異点」と呼ぶことにしよう。これは将来に想定されている「技術的特異点」のアナロジーで、コンピュータが人間の知能に取って代わる限界点を指す。「金融特異点」が示唆するのは、すべての投資判断はコンピュータプログラムに任せたほうが賢明だということだ。

多くの人々は、現状は金融特異点に近いと考えている。バフェットのような伝説的投資家でさえ、実際には市場をしのぐ業績を挙げているわけではない、との指摘がある。

もしこれが正しいとすると、投資家が皆一斉に、市場でミスプライスを探し出す努力をやめてしまう。市場にミスプライスなどありえないことになるからだ。市場参加者が合理的に想定するのは、すべての株価は、将来キャッシュフローの期待値を適切な割引率で割り戻した現在価値であり、そのキャッシュフローは、みんなが同様に理解するファンダメンタルズを反映しているということだ。投資家の判断に違いが出るとしたら、それはもっぱら個々人の状況に違いがあるからだ。

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