1945年に原子爆弾実験が初めて成功したのとほぼ同じ日に、そして第二次世界大戦終戦記念70年までほんの数週間という日に、安倍晋三首相が率いる日本の与党は、戦後初めて、自衛隊に武力行使の権限を与えるという安保関連法案を衆議院で採決した。
このことが与える影響は軽視できない。国内では、安倍首相の立場は瀬戸際に来ている。有権者はおおむね2対1の割合でこの新法案に反対しており、野党が抗議の退席を行ったこともあり、政府の支持率は約40パーセントに落ち込んでいる。衆院での当法案の可決を受けて、日本では福島の原発事故以来最大の抗議デモが行われ、「安倍は辞めろ」と書かれたプラカードを掲げた群衆が10万人も集まった。
55年前には安倍首相の祖父である岸信介氏も、あまりにも軍国主義的な日米安保条約改定法案を衆院で強行採決した際に、同様の抗議を受けて首相の座から引きずり下ろされている。
理想郷が終焉を迎える
安倍首相の動きに対しては、国内からも国外からもネガティブな見方が多い。
武力行使を放棄した唯一の国家であることを意味する憲法第9条に対し、今でも、日本人の多くは誇りをもっている。安倍首相が日本からこの偉業を取り去ってしまったことは、第二次世界大戦から生まれた最後の偉大なる理想郷が終焉を迎えることを意味する。安倍首相は国民をまったく馬鹿にし、国民の自国観を無視していると言える。
加えて、中国が日本の南方海域にある島々の領有権について異議を唱え、北朝鮮が核兵器で脅しをかけ、日本近辺の東南アジア諸国が第二次世界大戦の記憶をとどめている中で、当新法案は東アジアの緊張をますます強めることになる。中国外務省は、こうした動きが戦後日本の「平和的発展への道」という誓約とは異なった問題ある行動だとし、安倍首相は歴史から教訓を学ぶべきと主張している。