難民申請者の目前に広がる不法就労の闇市場 闇市場がいまや公共事業にまで広がっている
難民申請者を含む外国人労働者の受け入れが課題になる中、事態改善に向けた政策論議も続いている。自民党は今年、特命委員会を設けて外国人労働者の受け入れについて議論し、高度人材だけでなく、介護、農業、旅館等の分野で受け入れを進めていくべきだ、とする提言をまとめた。
7月の参議院選挙の公約にも、外国人労働者が適切に働ける制度の整備が盛り込まれた。
ただ、具体的な取り組みは全く進んでいない。政府の日本再興戦略には、「外国人受け入れの在り方について、総合的かつ具体的な検討を進める」と書かれているが、具体的に何を検討するのかというロイターの質問に、日本経済再生総合事務局の廣田新参事官補佐は「全く検討が始まっていないので、何とも言えない」と答えた。
「日本の政府は何もやってくれない」
法務当局の姿勢にも変化の兆しは見えない。就労資格のない仮放免中の外国人が公共事業の建設作業に従事していることについて、法務省入国管理局警備課の鳥巣直顕法務専門官は、「公共事業かどうかにかかわらず、認められない活動(労働)をしているのであれば好ましくないし、そういう状況はやめていただきたい。是正する必要がある」と答えた。仮放免など現行の入管制度について、見直す計画はないという。
難民認定のあり方について、ロイターが今年6月、同省に当時の岩城光英法相とのインタビューを申し込んだところ、「日程が調整できない」として拒否された。
こうした日本の行政当局の動きを難民申請者たちはどうみているのか。
マズラムは、10年近く住んでいるこの国が、自分を難民として受け入れる可能性はほとんどないと自覚している。朝から10時間に及んだ仕事を終え、毎日のようにユーチューブでクルドの若者たちがシリアでイスラム国(IS)と戦う映像に見入る。
「日本の政府は何もやってくれない。なんでもダメだって言うだけ」とマズラムの言葉は厳しい。「明日のことは考えられない。日本を追い出されたら、(トルコに)帰って死ぬしかない」。
(文中、敬称略)
(宮崎亜巳、Thomas Wilson、舩越みなみ、斎藤真理 編集:北松克朗)
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