貧困に喘ぐ若者が地中海で溺死する深刻事情 SNSがアフリカの貧しい若者を刺激している

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今年5月に地中海を渡ろうとしていた息子を亡くしたジャメル。ジジガの自宅で。©Kiyori Ueno

今年5月下旬、アフリカやシリアからの移民を乗せてリビアからイタリアへ渡ろうとしていたボートが地中海で相次いで転覆、沈没し、3日間で700人以上が溺死した。欧州へ渡ろうとする人々が地中海で命を落とす今シーズン最悪の出来事だった。

「ここには息子のような若者がたくさんいる」

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地中海から約5000キロ離れたエチオピア東部のソマリ州の町ジジガで運転手をする40歳のジャメル・アフメドが、溺死者の中に3月初旬突然姿を消した17歳の息子シャルマルケがいたと知ったのはまもなくのことだった。同じボートに乗っていた息子の友人の家族からの電話で息子が溺死したと聞いたのだった。「息子はいつも、ジジガにいても将来がないと言っていた」とジャメルはジジガの自宅で話した。息子のシャルマルケは昨年6月にも欧州行きを試みたが、首都アディス・アババで補導されて自宅に帰ってきた。「息子はここでの生活にとても絶望し、自暴自棄になっていた。ここには息子のような若者がたくさんいる」。

息子のシャルマルケがジジガを発つ1年ほど前に、ジャメルの20歳の甥がやはり地中海をボートで渡りイタリア到達に成功していた。甥はジャメルやシャルマルケに対し、イタリアに着くまでサハラ砂漠では4日間食べ物も水もなく歩き続けねばならかった過酷な経験を語り、あまりにリスクが高いのでやめるように、と忠告していた。

シャルマルケの足取りをたどるとこうだ。ジジガからアディスまで約620キロをバスで西に移動、さらにバスで北部の町ゴンダールを経て、スーダンとの国境の町メテマへ。そこから歩いてスーダンに入り、サハラ砂漠を経てリビアの首都トリポリへ。それぞれの国には渡欧を目指す移民をターゲットにした密航業者がおり、彼らを手引きする。

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