難民問題の裏で巨大化する密入国ビジネス

昨年は年間30億~60億ドルのカネが動いた

苦難を乗り越えてシチリア島にたどり着き、上陸する難民ら。(写真: ロイター/Antonio Parrinello)

2015年6月のある火曜日の夜、ニューヨーク州オールバニに住むエリトリア人の配達員、テスフォム・メハティ・メングトゥ(33)に、見覚えのない番号から電話がかかってきた。それは16歳の弟、ガーメイからだった。

故国エリトリアで投獄されて隣国スーダンに脱出。その後4日間かけてサハラ砂漠を横断してリビアに着いたばかりで、これから密入国を手伝った男に連れられてリビアの首都トリポリに行くという。その後、地中海を渡ってイタリアに向かうが、そのためには金が要る。

「欧州はすぐそこなんだ」と言う弟ほど、テスファムは乗り気にはなれなかった。彼は4年前、イスラエルに亡命しようとしてエジプトのシナイ砂漠を横断中に誘拐された別の弟を救い出すため、身代金1万7000ドルを支払った。

また、スーダンで妹を捕まえた密輸業者に6000ドルを送り、エチオピアに逃がしていた。テスファムはピザ宅配とトラック運転で、週に70時間働いている。

戦争で疲弊したリビアは中でも危険で、昨年4月には過激派組織「イスラム国(IS)」がエチオピア人とエリトリア人を計30人処刑して、その模様をサイトに投稿していた。幸運にも砂漠を越えられたとしても、欧州にたどり着けない例は多いのだ。

苦労して故国を逃れたテスフォムは以前、ガーメイにこう警告していた。エリトリアから逃げたとしても「海に放り込まれるか砂漠で死ぬかだ。途中で捕まってあえなく殺されることだってある。母さんのためにも、お前にはそんなことはさせられない」。

金を払わねば殺される

でも、こうなったからには仕方ない。金を払わなければガーメイは業者に殺されるだろう。テスフォムは送金に同意して、弟に再度電話するよう指示した。

しかし、その後数週間何の連絡もなく、ガーメイが使っていた電話は不通になった。ロイターがガーメイの足取りを調べ始めた数週間後の7月半ばにテスフォムは、弟にはもう会えないのではと考えていた。

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