エチオピアの首都アディス・アババのボレ国際空港から車で20分ほどにある住宅街にバッグデザイナー、鮫島弘子のブランド「アンドゥ・アメット(andu amet)」の工房がある。
3階建ての工房はもとは住居として建てられたもので、住居をレストランやオフィスに変えるというのは今のエチオピアではよくある慣習だ。白いフロアの工房は入り口で日本のように靴を脱ぐ。2階部分が作業部屋で、15人のエチオピア人職人たちが型に合わせて革を切ったり手で縫い上げている。鮫島はその1人ひとりの作業を見守り、時に指導する。開け放した窓からは標高2400メートルのさわやかな風が通り抜ける。
お嫁に行ってよかったね
「ものができていく感覚、その工程を見ることは、とても充実感を感じて満たされる。もの作りは好きだな、と思う瞬間です」と鮫島は言う。「量産ではないので、バッグ1つ作るのにとても時間がかかる。でもお客様はこのように大切に時間をかけて作られたバッグを長く大切に使って下さる。そして1つ目のバッグをもって2つ目を買いにきて下さる。革製品は一目見ると、手入れがきちんとされているか分かる。そんな時、『お嫁に行ってよかったね』と思う」と言って笑う。
鮫島は、日本では“最貧国のエチオピアで上質なシープ・スキンを使ったバッグを作り雇用創出に貢献する女性起業家”として有名な人である。しかし、鮫島は「途上国の雇用の創出というよりも、私は一流ブランドとして質とデザインで勝負している。世界中のファッショニスタからあこがれられるような最高級の製品を作ることを目指している」と自らのプロフェッショナリズムのあり方を語る。
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