エチオピア東部ソマリ州の州都の町ジジガのある日の夕方。伝統的な民族衣装の長スカートをまとった男性たち数人が店に集まり、30センチほどの枝から緑色の葉をむしり取って口に入れ、ゆっくりと噛んでは話に興じている。「気分が高まって、いい気持ちだ」こう言う男性たちが噛んでいるのがチャットだ。
チャットを噛む慣習は何千年も前からあった
チャットの葉を噛む行為は、エチオピアの首都アディス・アべバを含め全土でよく見られる光景だが、アディスから約620キロ東の町ジジガは同国でも最高級のチャットが生産される地域ハラゲから近く、チャットの売買が行われる一大拠点であり、国内でも最大のチャットの消費地だ。
ソマリ州はソマリアに隣接し、その名のとおり民族的にも同国と同じソマリ人が暮らす。ムスリムが圧倒的多数を占め、遊牧民たちが多い地域だ。チャットは人口40万人のジジガの町のマーケットや店舗などあちこちで1束50ブル(約250円)ほどで売られ、いたるところでチャットを噛む人々の姿を目にする。
チャットはエチオピアを含めた“アフリカの角”や南アラビア半島を原産とする常緑低木でイエメンではカート、ケニアではミラとも呼ばれる。この地域でチャットの葉を噛むことは社会慣習として何千年も前から行われてきたと言われている。
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