チャットは、噛むと葉から出る液で徐々に高揚感が沸き、エネルギーが出ることから、主に男性たちの社交の場や、ムスリムのラマダン中の夜通しの祈りの間など宗教上の儀式でも使われてきた。現在ではエチオピア、ソマリア、ジブチなどの国々や、中東イエメンで広く消費されている。
「噛むとパワフルになって、アイデアが次から次へと出てくる。一日中起きていられる」と言うのはアディスに住むビジネスマンのアゲグネフ・タデセだ。市内の自宅でコーヒーを飲みながら母、姉妹、おば、親戚たちと週に1~2度楽しむ。
しかし、チャットは“薬物”という別の顔も持つ。
チャットの作用はマリファナやコカインに比べると弱いものの、世界保健機関(WHO)は1980年、乱用すると低度から中度の心理的依存を引き起こす乱用薬物と指定。米国司法省麻薬取締局もチャットは含有する刺激物質により、「多幸感、エネルギー、食欲不振、倦怠感の欠如などの作用を引き起こす」こと、「効果が切れたときには、不眠や集中力の欠如を引き起こす」ことを報告している。
チャットはサウジアラビアやアラブ首長国連邦では非合法であり、米国、カナダのほか、欧州でも多くの国が薬物として禁止している。チャットを噛む習慣のあるソマリア移民が多い英国でも2014年にチャットは薬物と認定されて禁止された。
穀物畑をチャット畑に換える農民たち
チャットは、乾燥し涼しい土地に生育するため、エチオピアの高地の気候はチャット栽培に最適だ。また、チャットは換金しやすく、他の農作物よりはるかに高い収入が得られる。このため、農民の中には畑を穀物からチャットに換える人々が増え続け、チャットの作付面積はエチオピアの主食インジェラの原料であるテフなどの穀物をはるかに上回るペースで拡大している。
エチオピア中央統計局によると、テフの作付面積は2003年度の199万ヘクタールから2014年度には300万ヘクタールと1.5倍拡大したのに対し、チャットの作付面積は11万ヘクタールから25万ヘクタールと実に2.3倍に拡大した。
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