なぜエチオピアは「薬物」を輸出しているのか 貧しさゆえの負の連鎖が続いている

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ジジガで農業と家畜を育てるニマン・アブディ・アブールの自宅。自宅は伝統的な遊牧民の家だ ©Kiyori Ueno

ジジガで農業と家畜を育てて生計を立てているニマン・アブディ・アブールは約10年前にメイズとソルガムを育てていた2ヘクタールの土地の半分をチャット畑に換えた。

チャットは1回の収穫で6万ブル(約30万円)の収入になるという。今ではチャットの収入はニマンの全収入の9割を占め、この収入を妻と12人の子どもの家族のために麦や砂糖などの食料や学校教材の購入に使っている。

エチオピアはチャットの輸出で支えられている

エチオピアはいまだに世界でも最貧国の1つで、人口の80%が自作農を営む貧しい農家だ。歴史的にも定期的に干ばつに襲われ、昨年はエルニーニョの影響で30年で最悪といわれる大干ばつが起き、1000万人を超える人々に食糧支援が必要という状況に陥っている。そのエチオピアの中でもソマリ州は大干ばつの影響を最も受けた州の1つであり、現在も多くの人々が食糧配給を受けている。

チャットにはもう1つ重要な側面がある。政府にとりチャットは貴重な外貨獲得の手段であるということだ。

ニマン・アブディ・アブールのチャット畑。以前は穀物を育てていたが、収入がはるかにいいことから、チャット畑に換えた ©Kiyori Ueno

エチオピア税関の統計によると、2005年度にはチャットの輸出量は2万2000トンだったのが2014年度には5万2000トンに増加。輸出額も7億7000万ブル(約38億円)から57億ブル(約285億円)に増加し、コーヒー、油糧種子、金に次いで4番目に大きな輸出品(金額ベース)になっている。チャットは1キロ当たりの輸出額もコーヒー、油糧種子、豆類よりはるかに高い。まさにカネのなる木だ。

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