エチオピアで生まれる「最高級バッグ」の情熱 日本人起業家が現地で目指していること

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ガーナでは学校で家庭科の先生として働き、生徒たちに地元のビーズで売れるものを作らせた。良いものは売れ、お金が入るから生徒たちは授業にも目の色を変えて真剣に出席するようになった。ビジネスを作り出せば、働く場所ができ、それがやる気を出させ、誇りを持つことにもつながる。これではないかと思っていた直感が確信に変わった。

3年間のアフリカ生活を終えて帰国後に起業したいと思ったが、ノウハウがなかった。しばらく修行が必要だと思い、フランスのファッションブランドに入社、5年間東京で化粧品のマーケティングをした。それまでに起業したらエチオピアのシープ・スキンでバッグを作る、と決めていた。2010年の年末に会社を辞め、エチオピアへ。現地のパートナーと組んで仕事を始めた。昨年4月にはビジネスライセンス取得、現地法人化した。法人化に必要だった資金はファッションブランド時代の貯金を充てた。法人化以後、生産量も増えた。(販売数とともに数値は公表していない。)

型に合わせて革を切断するエチオピア人の男性職人 ©Kiyori Ueno

エチオピア時代に美しいシープ・スキンに出会った。鮫島が今使うのはエチオピアの羊の中でも、標高3000メートル以上の高地に生育する特別な羊だ。この羊のスキンは高地だからこそ、柔らかく、薄いのに丈夫。「エチオピアの羊の皮は全て良い。中でもこれほどの高地で育った羊の皮は薄いのに非常に丈夫で、薄くすいても破れない」と話す。

取引先を決める際には、環境に配慮しているかを確認

この特別な皮を革なめし業者から買い、自分の工房で縫製する。取引先の業者も、例えばなめしに使う薬剤クロムを河川に流す際にきちんと環境に配慮しているかどうか、児童労働を行っていないか、などをチェックしたうえで取り引きしている。

工房に置かれている革の小物入れの“悪い見本。”エチオピア人職人が作ってはいけない例として理解できるように、工房内に置いている ©Kiyori Ueno

エチオピアで仕事をする難しさは、優れた素材を製品化するプロセスだった。「エチオピアには最高級の皮があるのに、エチオピア人は良質の完成品を見たことがないために良質の作品とはどういうものかを知らない。ノウハウも技術力もないので、付加価値をつけて売ることができない。だからこれまで素材を安く海外に売ることしかできなかった」。まさにこれはアフリカに共通する問題点であり、アフリカが長い間貧困から脱却できない原因の1つでもある。

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