シェール革命の「都」に、群がる日本企業 製造業が息吹き返すヒューストンの今
ヒューストン中心部から南へ約100キロメートル、メキシコ湾に面したフリーポート市。ここが今、米国製造業の復権を象徴する場所になろうとしている。
町のどこからでも視界に入るのが世界最大の化学メーカー、ダウ・ケミカルの石油化学コンビナートだ(写真)。工場の敷地面積だけで約2800万平方メートル(5.3キロメートル四方)、工場以外を含めた全敷地では約6900万平方メートル(8.3キロメートル四方)に及ぶ。単独企業の化学工場としては北米最大規模だ。ダウが米国内で販売する製品の44%、世界販売全体の20%がここで生産されている。
同社は昨年4月、シェールガス由来のエタンを原料として、世界最大のエチレン工場をここに新設する(17年稼働)と発表。アンドリュー・リブリスCEOは、「米国のガス価格の低位安定により、米国製造業は再生の時を迎えた」とコメントした。同社はここで大型プロピレン工場も新設する(15年稼働)ほか、昨年12月にはルイジアナ州のエチレン工場も4年ぶりに再稼働した。原油由来のナフサを原料とする欧州・アジア勢に対し、原料コストで圧倒的優位に立てるとの自信が裏にある。
日本企業も割安なシェールガス利用を狙い工場進出
同市内にはダウ以外にも多くの化学メーカーが進出している。すでに、BASF(ドイツ系)、アモコ・ケミカル、モンサント、信越化学工業などが工場を有しているが、今後はさらに進出や増設が相次ぐ見通しだ。
日系企業の間でも、三井物産はダウと折半出資で世界最大規模の塩素製造工場をフリーポートに建設し、2013年央から稼働する予定。三菱ケミカルホールディングスもダウの新エチレン工場に隣接して、MMA(メタクリル酸メチル)と呼ばれる化学品の工場建設を検討している。また、クラレは、「ポバール」と呼ぶエチレン系樹脂の新工場をフリーポートに近いラポルテ市で建設中で、シェールガス等による原燃料メリットを新設の理由に挙げている。
LNG輸出基地の建設計画も進む。フリーポートLNGデベロップメント社が17年の輸出開始をメドにプロジェクトを進めており、大阪ガスと中部電力が同社と液化加工契約を結んでいる。早ければ3月にも米国エネルギー省から輸出許可が下りる見通し。割安な米国産シェールガスを液化したLNGが将来、このフリーポート市の港から日本へ持ち込まれるのだ。
フリーポート市事業開発局によると、同市での民間企業による新規設備投資は12年には1.2億ドルだったが、13年には24.2億ドル、14年には22.3億ドル、15年には33.3億ドルへと急拡大する見通し。13~15年の3年間合計では80億ドル(約7400億円)、13~17年の5年間合計では113億ドル(約1兆0500億円)に及ぶ。今後もその額は、新たな計画発表とともに一段と増加しそうだ。
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