円安で貿易収支はどこまで改善するのか 景気・経済観測(日本)

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燃料輸入は必ずしも貿易収支悪化の主因ではない(ロシア産燃料を運ぶLNG船)

 

貿易収支は東日本大震災以降、2年近くにわたって赤字が続いている。2012年の貿易収支は前年よりも4.4兆円悪化し、マイナス6.9兆円(通関ベース)となった。震災前の2010年は6.6兆円の黒字だったから貿易収支はこの2年間で13.6兆円も悪化したことになる。

貿易赤字の長期化を受けて、このまま貿易赤字が定着するとの見方が増えている。日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査」では、2012年5月から毎月、貿易収支の黒字転換時期の見通しを約40人のエコノミストに調査している。

2012年5月調査では、黒字転換の時期を2012年度中、2013年度中と回答するエコノミストの割合がそれぞれ30%程度、合わせて60%を超えていた。しかし、実際の貿易赤字が想定以上に拡大、継続していることを受けて、直近の2013年2月調査では、2013年度末までに黒字転換するとの回答はわずか3%となり、数年内に黒字転換しないとするエコノミストの割合が2012年5月調査の約15%から約30%まで上昇している。

原発停止が貿易赤字拡大の主因ではない

巷間、東日本大震災後に原子力発電所が相次いで停止し、火力発電を増強したことによって燃料輸入が急増したことが貿易赤字の主因とされることも多い。しかし、このような見方は必ずしも正確ではない。

2010年から2012年にかけての貿易収支の悪化要因を輸出(数量、価格)と輸入(数量、価格)に分けてみると、輸出の減少による部分がマイナス3.7兆円、輸入の増加による部分がマイナス9.9兆円となる。このうち、輸出は数量の減少分がマイナス5.0兆円、輸入は価格の上昇分がマイナス6.4兆円である。つまり、過去2年間の貿易収支悪化の約半分が輸入価格の上昇によるものということになる(上表)。

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