「アベノミクス期待」の円安は1ドル95円が限界 市場動向を読む(為替)
アベノミクスによる対ドルでの円安は1ドル=95円が臨界点になると見込んでいる。最大の理由は、95円前後でドル円の「ファンダメンタルズへの回帰」が終了すると考えられることだ。
過去8年ほど、ドル円相場は日米金利差、特に金融政策の方向性を織り込む傾向にある日米2年金利差と高い相関を有してきた。ドル円が124円台で大天井をつけた2007年7月から2008年12月末までの両者の関係は、日米2年金利差が1%変化すると、ドル円が7円ほど動くと いうものであった。これは長期的な両者の関係から見ても、あまり違和感はない。
実態からかけ離れたドル安円高の是正が進んだ
だが、FRB(米国連邦準備制度理事会)が量的緩和を始めた2009年以降は、日米2年金利差が1%変化すると、ドル円が23円ほど動くという関係にあった。1%の金利差変化で23円もの値動きが生じるとの関係は、長期的に維持しうるものではない。
ドル円の金利差の相関の高さに着目した、投機的なドル売り円買いによって、ドル円は日米金利差の実態からかけ離れたドル安円高水準に押し下げられていたのである。
ところが、足もとでは、アベノミクスへの期待感、つまり、安倍政権が大胆な金融緩和と財政出動によるデフレ円高克服を強く訴え始めたことを受けて、ヘッジファンドなど短期筋の投資行動は円買いどころか、完全に円売りに移行した。
その結果、ドル円は日米金利差の実態からかけ離れたドル安円高水準を維持できなくなった。そうした是正が始まったため、過去3カ月、日米金利差が大きくは変化していないにもかかわらず、急速なドル高円安が進んだものと考えられる。つまり、現在起こっている現象は、過去に歪められた価格水準の是正である。
一見、政治要因などに着目した投機主導の相場に見えるが、この間、むしろ「ファンダメンタルズへの回帰」が進んできたのである。2007年から2008年までの日米2年金利差との関係で試算してみると、1ドル95円前後がドル円の適正水準との推計値が得られる。今しばらくのドル高円安の可能性を筆者は否定しない。
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