円安で貿易収支はどこまで改善するのか

景気・経済観測(日本)

輸入価格の上昇は主として原油や液化天然ガス(LNG)の価格上昇によるものだが、これは世界経済の動向や産油国の政情不安などを背景としたもので、基本的には日本国内の要因によって決まるものではない。火力発電増強に伴う輸入増は数量の増加となって表れるはずだが、鉱物性燃料の輸入数量の増加による貿易収支の悪化はマイナス1.6兆円(液化天然ガスはマイナス1.0兆円)と貿易収支悪化全体(マイナス13.6兆円)の1割強を占めるにすぎない。

貿易収支悪化の主因が鉱物性燃料の輸入量の増加でないということは、逆に言えば原子力発電所が再稼動したとしてもそれほど貿易収支は改善しないことを意味している。

円安による貿易収支への影響試算

安倍新政権が金融緩和強化の姿勢を明確に打ち出していることを反映し、円安が急速に進行している。円安の進行は価格競争力の上昇による輸出数量の増加、相対価格の上昇による輸入数量の減少を通じて、中長期的には貿易収支の改善に寄与するが、その効果が顕在化するまでにはある程度の時間を要する。

日本の貿易取引を通貨別に見ると、外貨建ての割合は輸出が61.6%、輸入が77.1%(米ドル建ては輸出が51.5%、輸入が72.5%、いずれも2012年下期実績)となっており、為替レートの直接的な影響は輸出価格よりも輸入価格のほうが大きくなる傾向がある。このため、短期的には円安は貿易収支の悪化につながりやすくなる。

ここで、ラグ付の輸出関数(数量、価格)、輸入関数(数量、価格)を推定した上で、10%の円安が輸出入に及ぼす影響を試算したところ、数量ベースでは1四半期目から輸出が増加、輸入が減少し、ともに貿易収支を改善する方向に働く。

次ページ円安の価格効果だけでは貿易赤字は脱却できない
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