原因は、男と女の脳の違い。
T氏おすすめの、カップルのバイブルともいうべき、黒川伊保子氏の名著『恋愛脳』(新潮文庫)によれば、コミュニケーションの場における男女の違いは、すべて右脳と左脳を結ぶ、脳梁の太さの違いからきているとのこと。
たったそれだけの男女の違いが、ケンカの種になったり、はたまた離婚の原因になったりするのですから、おだやかではありません。
男性に比べて、圧倒的な太さの脳梁をもった女性にとって、心はいつもさまざまな情報でいっぱい。また、見え方も平面的で、時系列で整理する機能がないので、過去も現在も、テーマが同じなら、すべてが同じひとつのフォルダに入っています。
なので、男性が、「なんでいまさらそんな昔の事」と思うような、過去の嘘や浮気のことを、何十年たっても持ち出してこられるのですし、逆に男性は脳梁が細いが故に、情報をテーマ別に時系列で整理、保存ができます。
この、脳の違いに加えて、男女間のコミュニケーションをさらにややこしくするものがあります。それは……。
女性にあって、男性にないもの。
ずばり、それは、「気分」の存在。黒川氏の著書には「気持ち」と書かれていますが、「気分」と言ったほうが、より女性ならではの特徴がわかりやすいので、ここでは「気分」という言葉を使っていきます。
さきほどの、テレビの露天風呂のシーンをめぐっておきたトラブル、その原因こそ、この「気分」なのです。
塾でも、男性陣一同が深くうなずきました。この場合の男性心理、それは、
「好きな人が温泉に行きたいと言っている。彼氏である自分はその願いを叶えなくてはならない。だがしかし、どうやって?」
という、実現への道筋です。実現の可能性が見えて、はじめて、彼女に対し、
「いいよ。行こう」
という返事ができるのだ、と。
これには、女性の出席者が全員びっくり。そして、口々に発せられた反応は
「えー、そこまで具体的に要求してないし」
「ただ、そのシーンを見て、行きたいと思っただけなのに」
「彼氏には、いいね、と、ひとこと同意してほしかっただけよ」
「もし、ほんとうに行けなくても、別にかまわない。行けなくてごめんね、って言ってくれたらいいのよ」
(だったら、なぜ、行きたいって言うんだ?)と、むくむくと疑問の湧いた男性陣を、大いなるイライラと落胆の淵に突き落としたのは、女性陣が揃って発したこのひとことでした。
「だって、そのときはそういう気分だったんだもの」
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