酒は大人の教養である―その5. ワイン後編
前回は、ワインといえばやはりフランス、ということで、その歴史、2大産地であるボルドーとブルゴーニュの特徴やその違いについて、お話しさせていただきました。
後半の今回は、その他のヨーロッパのワインについて、歴史と特徴をお話ししようと思います。
まず、日本の輸入ワインシェアでは、33%のフランスに次いで高い19%のイタリア(2012年1~11月 財務省貿易統計より)。
イタリアワインの特徴は、何といっても、風土に根ざした葡萄の品種と味わいの豊富さ。日本と同じように南北に長い地形と、19世紀に統一されるまで、いくつもの王国や共和国に分かれていたその歴史が、各地で、それぞれの土着の品種を使ったワインづくりの発展につながりました。
有名な産地としては、アルプスの麓に位置するピエモンテ(「山の足」の意味)、中価格帯の良質なワインが多いヴェネト州、そして日本でもっとも早くから飲まれていたワインの代表、キャンティの産地として知られているトスカーナ州の3つが上げられます。
いずれも、トリノ、ヴェネツィア、フィレンツェといった古都を有し、日本からの観光客も多い土地。
なので、ピエモンテでイタリアワインの王様といわれるバローロ、弟分のバルバレスコに舌鼓をうち、ヴェネトでイタリアを代表する白、ソアヴェに酔い、トスカーナで伝統のキャンティ・クラシコを味わった、という方も多いことでしょう。
イタリアワインを味わうときは、ぜひ、葡萄の品種とともに、その産地の歴史、そして地理や気候に注目を。一杯のグラスの中に、いろいろなロマンが揺らぎます。
ドイツは白。で、文豪が飲んでいたのは?
ドイツワインといえば、「白」。キレのある酸味がすばらしいモーゼルや、ほぼすべての畑が真南に向いた斜面という最高の環境でつくられるラインガウなどが有名ですが、ドイツ人が白しか飲まないかというと、そうでもないようで。
『ファウスト』で知られる文豪ゲーテは、また大酒飲みとしても有名で、ワイマールの官吏時代、官舎の地下室には常に大量のワインが保管されていたそうです。
産地は、ドイツならフランケン、ヴェルツブルグ、フランスならブルゴーニュ、アルザス、ラングドック。毎日必ず数本は空にしていたといいますから(池内紀『ゲーテさんこんばんは』集英社文庫)、うらやましい限り、いえ、恐るべき肝臓ですね。
当時のドイツでは、ワインは神様からの贈り物。人に迷惑をかけない限り、どんなに度をすごしても罪にはあたらない、という考え方で世の中が動いていたので、ワイン好きにはそれこそ天国だったでしょう。
会社員時代、ライン川沿いのワインバーで、地元の白を飲みながら初夏の1日を過ごしたことがありますが、からりと晴れた空の下で、ライン川を行き交う船を眺めながら飲むリースリングの味は、喉にしみわたる香り高い谷間の清水といった感じで、最高でした。
ワイン、カヴァ、シェリー。
多彩なスペインのワインファミリー。
日本の輸入ワインシェア第4位のスペイン(14%、前出)。ワインづくりが現在のように全土で盛んになったのは、19世紀後半にフランスで、葡萄の木の根を食い荒らす、フィロキセラの害で壊滅的な被害を受けた生産者たちが、スペインに移住し、ワインづくりの拠点としたから。
イタリアと同じように、土着の品種を中心に、ですがイタリアとはまた違った個性的な味わいが楽しめるものが多いです。
スペインのワインについてのもうひとつの特徴は、スパークリングワインであるカヴァ、そして、白ワインにブランデーを加えて度数を上げたシェリーが、ワインと同じく日常的に飲まれていること。
「きょうは白にしようか、それともカヴァ?」
「私はシェリーでいくわ」
なんていう会話は、想像するだけで、酒飲み心をくすぐりますね。
取材協力:ジェノスワインマーチャント(株)
イラスト:青野 達人
次回は2月8日(金)掲載。テーマは、「バーな人たちの物語」です。
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