国際金融市場を揺るがせた英国のEU(欧州連合)離脱(Brexit)決定から1週間が経過した。6月28~29日に開催されたEU首脳会議では、初日こそ英国のEU離脱時期に関する話し合いが28か国で行われたものの、2日目となる29日は英国抜きの27か国で議論が行われた。英国抜きのEUが動き出した歴史的な日でもある。
初日会合では、離脱通知は9月以降に先送りする方針で合意されている。キャメロン英首相が9月に辞任し、9月9日に後任が確定するというスケジュールのため、もはやキャメロン首相とEUが交渉する意味はなく、先送りは不可抗力だ。だが、これが英国がEUへ通す最後のわがままとなるかもしれない。採択された共同声明では「(通知は)可能な限り早く行われるべし。通知前のあらゆる交渉は有り得ない」と明記され、「早く出ていけ。問答は無用」というメッセージがクリアに示されている。
次回のEU首脳会議は27か国で、9月16日、ブラチスラバ(スロバキア)で実施されるが、その頃には新しい英首相とEUが既に顔合わせを済ませているだろう。
「脱走者」と形容された英国
なお、上記の声明文からでも十分伝わるが、離脱決定から1週間で見られた、EU高官の発言を見ると、メルケル独首相は「(Brexitの)決定を覆す道はないと断言したい」、「離脱を望む国は、特典を維持しながら責任を回避できると期待すべきではない」と述べ、ユンケル欧州委員会委員長は「脱走者が歓迎されることはない」と英国を脱走者と表現した。筆者の事前想定通り、EUは離脱ドミノへのけん制という意味から、極力英国には「見せしめ」になって欲しいというスタンスを貫きそうである。
ちなみに国民投票自体に法的拘束力はなく、制度上は政府も議会も決定を無視できるという解釈に立って再投票を求めるムードがあることも取り沙汰されている。しかし、EU首脳会議後、キャメロン首相が「後悔していない。英国民の判断は受け入れられなければならない」と述べ、メルケル首相も上述のように「断言」していることを見るにつけ、その可能性はほぼゼロなのだと思わざるを得ない。
そもそも本気で離脱票に投じた層には、結果が出て怖くなったから国民投票をやり直すという行為自体が民主主義に対する愚弄と映るはず。Brexitの本質的なテーマが、ブリュッセル(≒EU本部≒欧州委員会)から「自分たちの民主主義」を取り戻すことであった点を踏まえれば、国民投票の無視は本末転倒である。希望的観測として一縷の望みを抱く気持ちは正直筆者にもあるが、期待すべきものではないのだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら