英国が「EUを離脱しない」は本当なのか 「EU研究第一人者」北大・遠藤教授が予測

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次期首相に最も近い位置にいる保守党のテリーザ・メイ内相。9月9日の党員投票で勝利できるか(Press Association/アフロ)

前回の「英国はEU離脱で『のた打ち回る』ことになる」(6月27日配信)では、国民投票の結果を受け、何がどう起きたのかを分析した。結局、計3回に分けて寄稿することになるが、この第2回と、次の第3回では、今後を占っていきたい。お互い密接に連関するが、便宜上、イギリス・欧州・世界の3つに分けて検討する。ここではイギリスから始めよう。

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あらかじめ、今回(第2回)の中心的なテーゼ(命題)を述べれば、「イギリスは、領域的な亀裂を深め、主流政党による国民統合もままならず、自由民主主義の地盤が緩んだ形となっている」ということになろう。また、第3回では、〈資本主義(グローバル化)=国家主権=民主主義〉の「トリレンマ」(三すくみ)によって、EUだけでなく、世界が揺さぶられるさまが語られるだろう。

高まるスコットランドの独立機運

イギリスはすでに身もだえている。デモが続き、主要政党内では対立が深まっている。歴史的に折り重なった亀裂が、南北、老若、貧富など多くの分断線に沿って走っており、それらが一気に噴き出しといえよう。ここでは、特にイギリスの将来に直結する「2つの活断層」に注目する。

ひとつは、連合王国(UK)のかたちを左右するエスニシティ(共通の言語や宗教などによる特定の集団への帰属)とナショナリズムにかかわる。周知のように、スコットランドでは独立志向が再燃している。無理もない。同地では、24ポイント差をつけ、明確にEU残留を打ち出したのに対して、人口で勝るイングランド(全英の8割超)が7ポイント差をつけて離脱を志向し、スコットランドの声を圧倒した形となったからである。

もとよりイングランドとの連合に違和感があり、イングランド優勢のウェストミンスター議会によって自分たちの命運が左右されるのを快く思っていないところに、リーマンショック(2008年)後の保守党政権は超緊縮政策を強行。スコットランドの重視する福祉が削られ、不満が募っていた。それでも2014年の住民投票で、独立が10ポイント差で否決され、しばしそれは封印されていた。

今回の国民投票は、寝た子を起こしてしまった。スコットランドのニコラ・スタージョン首席大臣(首相、国民党=SNPの党首でもある)は、離脱派の勝利を受け、「EU残留を選択したスコットランドの声を尊重しなければならない」とし、再度の住民投票を選択肢の一つと明言した。独立に向けて問題点を洗い出すため、有識者や実務家による諮問委員会を設置したうえ、ブリュッセルを訪れた。

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