欧州発金融危機が再燃しても不思議ではない ユーロとポンドが急落した当時と似ている
6日の日経平均株価は急落した。前日の海外市場でのリスクオフの動きが強まったことが背景にある。日本時間では、為替市場でドル円が100円台をつけるなど、典型的なリスク回避の動きになっている。またポンド安も加速しており、さらにユーロの下落も顕著になりつつある。市場関係者から「英国のEU離脱の影響は軽微だった」との解説が出始めた直後の株価急落とポンド急落の動きに、市場は動揺を隠せない。
英国の欧州連合(EU)離脱決定直後に世界的に株価は急落したが、その後はおひざ元の英国株が年初来高値を更新し、米国株も国民投票前の水準を概ね回復する動きとなった。この動きから、市場では「英国のEU離脱の影響は軽微」との見方が広がり、買戻しの動きが見られた。しかし、市場の関心は、欧州の銀行不安に向かっている。
報道によると、イタリアの銀行は不良債権比率が高止まりした状態が続いているという。欧州の銀行問題は、2010年ごろの欧州債務危機のころも指摘されていた。特にスペインやイタリアなどの南欧諸国に対する懸念が高まり、国債利回りが急伸した。この状況下でスペインは銀行部門の改革を進めたが、イタリアの対応は甘く、結果的に現在の懸念につながっているとの指摘がある。今月中にイタリアの銀行部門のストレステストの結果が判明する見通しであり、その内容次第では、欧州発の金融危機が再燃する可能性がある。
ポンドは歴史的な下落相場
一方、英国の不動産ファンドの解約停止の動きも懸念につながっている。英国には海外から不動産投資資金が流れ込んできただけに、これが逆流するようなことになれば、英国景気の悪化は不可避との指摘もある。この動きを受けて、ポンド安が加速しており、フシ目の1ポンド=1.30ドルを割り込んだ。31年ぶりの安値という、歴史的な下落相場になっているが、対円でもポンドは急落し、12年以来の130円割れとなっている。この結果、ドル円も急落し、100円台に入っており、これが輸出企業の業績悪化懸念を想起させ、日経平均株価は急落している。
ポイントは、英国当局がポンド安を受け入れる姿勢を見せている点である。イングランド銀行のカーニー総裁は、「ポンド安は国際収支の赤字圧縮に寄与する」とし、ポンド安をむしろ歓迎する姿勢を示している。さらに今夏にも金融緩和を実施する可能性があると言明しており、ポンド安は続く可能性が高まっている。英国の主要銘柄の上昇の背景には、海外で事業を展開する企業の収益が、ポンド安によって押し上げられるとの見方がある。日本や米国と同様、英国も通貨安を必要としている。まさに「通貨安競争」である。
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