英国現地ルポ、「EU離脱派」の熱狂は冷めた ジョンソン氏撤退で迷走する英国トップの座
6月28日。英国ロンドンのウエストミンスターにあるトラファルガー広場には、雨天にもかかわらず多くの人が詰めかけていた。市民は石柱によじ登り、「EU,We Love You」とシュプレヒコールを上げた。
同月23日に行われた、英国のEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票では、離脱支持派の得票率が約52%に達し、残留支持派の約48%を上回って勝利を収めた。投票結果を受け、残留支持だったデービッド・キャメロン首相は辞意を表明、離脱多数という国民の意思を尊重する意向を示した。
だが、英国は「Brexit(英国の離脱)」という自らの選択に対し、大揺れに揺れている。納得しない残留派からは不満が噴出。国民投票のやり直しを求める署名の数は300万人をも超えた。
怒りの原因の一つは離脱派がキャンペーンで掲げた耳当たりのいい公約にある。たとえば「離脱すれば、EUに拠出している週3億5000万ポンドを、無料医療サービス(NHS)に回せる」というもの。もともとキャンペーン中には「この額は膨らませすぎている」との疑問が挙がっていた。旗振り役だった、英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首が投票後、過ちを事実上認める発言をしたことで、残留派からの批判が高まった。
離脱の結果にとまどう外国人
トラファルガー広場の残留派集会は、警備上の理由から、主催者がフェイスブックで事前に中止を報告。それでも集まった若者たちは降りしきる雨の中、傘も差さず「Brexit反対」を叫んだ。
ルイ・マサイさんも国民投票で残留に1票を投じた一人だ。手には「One Love,One Unity(一つの愛、一つの連帯)」と書かれた横断幕。国民投票が再び実施されるのは考えにくいが、「いい方法。みんなで話し合う場も設けるべき」と訴える。
約800万人の人口のうち、「3人に1人が移民」ともいわれる、国際都市のロンドン。広場には投票に参加できなかった、英国在住の外国人の姿も目立った。
10年前から住むドイツ人のフランツ・イスカさんは「ロンドンに住んで自分が外国人と感じたのは初めて」と憤る。ロンドンで9年暮らすフランス人のキム・ナジョスさんは「英国に多くのフランス人が住むのと同じように、フランスでも多くの英国人が生活している。フランスに悪影響が及ぶのは必至」と見通す。
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